守備派が目覚めた「押し」の境地。氷の女王・野添ゆかりの進撃【麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 予選第2節Aブロック2卓】
それは、麻雀界でも最大級のミステリーなのではないかと思っている。最高位戦日本プロ麻雀協会所属、「氷の女王」野添ゆかりがノンタイトルでいることは――。
13年のプロキャリアの中で女流最高位決定戦に残ること、じつに4回。その実力は折り紙つきで、野添最強説を推すプロもいるほどだ。
「女流リーグはずっと出続けているんですよ。でも関西に移住したことをきっかけに関西リーグに出ることになったんですけれど、その際にシステム上、自動的にBリーグになったんですね。そこから3年くらい全然ダメで、とうとう今年からCリーグになってしまいました。また、ここ数年は他のタイトル戦にも出ていなかったし、それはノンタイトルですよね(笑)」
自虐気味に野添は語ったが、今年度の女流Cリーグは絶好調を維持している。麻雀ウォッチ プリンセスリーグ第2節Aブロック2卓の対局が行われた時点で、最高位戦ルールとしては異例中の異例とも言える451.5pという高得点を叩き出している。オカなしルール20半荘でこの数字を叩き出していることから、いかに野添が好調をキープしているか理解できると思う。
「私はホントに気が小さくて弱気になることが多いんです。人からは守備型と言われることが多いんですけど、自分が先に退いてしまうからそうなっているだけで(笑)。でも最近は押すこと、攻撃することを意識するようにしています」
守備型の選手の中には長期の対局で大崩れはしないものの、勝負所で攻めきれないというタイプも多い。当然ながら、麻雀は加点しなければ勝てない競技だ。野添は試行錯誤の末にバランスの最適解にたどり着きつつあるのかもしれない。

第2節Aブロックの対局はすでに終了しており、野添は暫定5位となっている。各者が僅差ということもあり、最終第3節に向けて少しでもポイントを稼ぎたいところだ。

この日の同卓者は7位の朝倉、4位の大崎、2位の上田という顔ぶれ。ポイントが競っているライバルたちを相手に、野添が最近のテーマとしている「押し」が早速問われる展開が予想された。

1回戦は3局連続で流局という重苦しい雰囲気でスタートした。迎えた東4局3本場は供託が3本あり、スピードも問われそうな局面だ。そんな状況で野添は配牌で3メンツが完成。絶好の1シャンテンだが、野添は2枚切れの
よりも生牌の
を切ることを優先した。スピード命の局面だけに、役牌は重なる前に処理しようという思考が伺える。

実際、親の大崎は4巡目に
を重ねている。もちろん配牌からトイツのケースはあるが、それよりも後重なりのケースの方が圧倒的に多い。自身の配牌が一番手と見て、全体の速度を遅くしようという狙いがピタリとはまった格好だ。

一方、朝倉の元へも強烈な手が入っていた。速度では野添に劣るものの、ドラと赤を2枚ずつ抱え、役牌の
も重なった。

テンパイ一番乗りは、やはり野添だった。
単騎か
単騎のリーチをかけられる状況ではあったが、ひとまず
を切ってヤミテンとする。自身の手に赤もドラもないことから、他家からの押し返しを視野に入れたのかもしれない。

朝倉の後手に回ってしまったものの、上田もリーチ! リーチ・ピンフの
待ちだ。
は――

野添からいつこぼれてもおかしくない! テンパイをキープするなら
か
切り。撤退を決め込むなら
が全員に安牌だが――

野添は
を切って強気のテンパイキープ! すでに
を切っているため、ピンズよりマンズの方が望ましい変化が多いという部分も判断材料の一つだったかもしれない。野添が放銃を回避した結果――

・赤2・ドラ2、8000は8900に供託4本プラス、占めて12900の大きな収入を得た。

そんな朝倉を野添が追いかける。リーチ・
、2600を上田からアガって差を詰める。

南3局1本場、朝倉が
のポンテンを入れる。ホンイツの
待ちだ。

親番の野添は1シャンテン。トップを奪取するためには、この親番でなんとしてでも加点したいところ。そして――

4200点を放銃し、朝倉がさらに遠ざかる結果となった。ここから野添は、予備プランへと移行することとなる。朝倉には満貫まで打っても、オーラスで十分に2着目を狙える位置だ。ここでは4200点の失点だったため、大崎より400点リードしている。あとは大崎とのスピードバトルを制すだけだ。上家に朝倉がいることで、アシストも期待できるかもしれない。

オーラス、まずは大崎が
をポン。
バックからのカン
受けさえも拒否し、ホンイツを本線とする。親番の大崎としては、トップ浮上の可能性も十分に残されている。スピードだけでなく打点も兼ねたい局面だ。野添も絞りに徹することができる局面ではなく、十分に仕掛けが効くと見たのだろう。

ラス目の上田は高め456三色の1シャンテンだ。この
を朝倉が合わせ打ち――

野添がネックの一つであるカンチャンをチー。
バックをメインとしつつ、タンヤオへの移行もあるかもしれない。

朝倉はここから
を切り、早くも野添へのアシストに徹する。結果的に野添の不要牌ではあったものの、その意図がはっきりと汲み取れる。

大崎が
をチー! 道中で
が重なったため、
バックのテンパイとなった。テンパイ料も大きく左右するこの局面、贅沢は言っていられない。

を切ってテンパイキープ。2着と3着の順位点差は、素点にして20000点相当だ。彼女もまた、この局面の重要性を理解して押していく!

そんな修羅場に上田も参入! 三色こそならなかったものの、メンピン・赤の
待ちで素点回復を目指す。

このリーチを受けた朝倉もまた、一発目に無スジの
を叩き切った! ピンズと役牌は大崎へのケアとして切らず、それ以外の牌で上田か野添がアガる分には構わない。多少の素点を失ったとしても、意地でもトップを死守しようという狙いだ。

場の温度が徐々に上昇していく中、大崎のもとへ
が訪れた。朝倉が切った
に野添は声をかけていないが、その後に
を手出ししている。そして上田には片スジ。

この尋常ならざる大崎の押しの直後、野添がドラの
を引く。大崎には安牌だが、これも切るのか? しばし考えた後――

ここで野添は撤退を決めた。野添としては上田が大崎から直撃、あるいは満貫ツモまでなら2着をキープできる。巡目も残っており、野添には大崎ほどリスクを冒すメリットがない。「押し」を意識しているとは言いつつ、ギリギリの分水嶺はしっかりと見極めている。そして――

目論見通りに2着に滑り込んだ野添は、トータル順位も4位にまで浮上した。

2回戦は野添が1000-2000をツモって先制。初戦に続いて好調をキープしている。

対する朝倉はドラ3・赤1のシャンテン。
が2枚切れていることもあり、自己都合で
を切ったが――

大きく点棒が動く展開となったが、東2局1本場、ここでも野添が食い下がる。ホンイツ・赤をトップ目の大崎から直撃し、3900は4200和了。一撃で暫定トップ目に立った。

野添トップ目のまま南2局に突入。ここでも彼女の妙技が冴えた。わずか2巡でチートイツの1シャンテンに。

当面のライバルである2着目の大崎には、赤が2枚。ドラの
をいつリリースしてもおかしくないほど整った手組だ。親満どころか、親跳さえ現実的だ。

そんな局面で、こちらも十分に打点が見込める上田が放った
を――

野添がポンした。1副露までなら三暗刻になる可能性もあるが、高確率でトイトイのみの2600点となりそうだ。安牌候補でもある
から仕掛けたことも含めて、守備派・野添とは思えぬほどのアグレッシブさを感じた。
「2着目の大崎さんが打点を作ってくるのを知っているから、あまり親をさせたくない局面なんですよ。とにかく先手を取りたかったのですが、チートイツだとそれができるかわからない。私の捨て牌がピンズとマンズをバラ切りしていたから、
と
から仕掛けた場合だけは、ホンイツに見えてトイトイを怪しまれにくいと思ったんです」
ここを勝負所と見定め、野添が覚悟を決めて前へ出る。

当然ポン! 狙い目の
と
のうち、見事に片方を鳴くことに成功した。

大崎は速度を合わせるため、やむを得ず
をリャンメンチー。タンヤオ・赤2の1シャンテンだが、456の三色が絡めば満貫にも成り得る。

そして大崎もテンパイ。
単騎に受けるには、ドラの
を切らねばならない。野添は
と
をポンしており、変則手濃厚の河だ。このドラは切れるのか――

切った! ドラがトイツであれば中張牌を生かしたオーソドックスな手組でも打点十分となるため、染め手や縦系の手役に無理やり移行することはないだろう。ましてやトップ目の野添ならば、なおさらだ。これが世に言う「ドラトイツ以上だったら染めないやろ」理論である。

大崎は
単騎から、めまぐるしく待ちを変えていく。
待ちの亜リャンメンとなり――

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の4メンチャンにまでクラスチェンジさせた。そんな大崎との競り合いを――

野添が制した。難局をしのいだ結果、2回戦は野添に凱歌が上がった。
ここでついに野添は借金返済。スタート時点でおよそ110ポイントの差があった上田も、ほぼ目前まで迫っていた。

流局が続いて訪れた東3局3本場、先制リーチを入れたのは大崎だった。イッツー確定のカン
待ちだ。

そのリーチを受けた一発目、野添の手牌はこちら。678の三色を崩さず好形テンパイを目指したいところだが、打牌候補の
は、いずれも大崎の無スジだ。親リーチの一発目に、これを切れるのか?
野添が選んだのは、2スジにまたがる
だった。スジ牌として
と
を抱えているが、
宣言牌のリーチに対して
は普通に危険牌で、
もドラが
ということを踏まえると、それほど安全度が高いとも言えなそうだ。テーマに掲げていた「押し」がここでも存分に発揮された。
「本当に怖かったですけどね(笑)。でも、さすがにこれで降りていたらダメだと。普段は弱気だから、奮い立たせて
を切りました。赤ありルールだから大崎さんの手が高い可能性もあるけれど、勝負に値すると思っていましたから」
大きく踏み込んだ野添だが、なかなかテンパイまで至らない。そうこうしている間に新たな参入者が。

と、ここでようやく野添にテンパイが入る。ドラの
を切れば、
と
の並びシャンパンで満貫確定となるが――
「終局間際だったし、もうこの手がアガれるとは、そんなに思っていないんですよ。安全にテンパイできればいいかなぁくらいに思っていました」
野添に搭載されているギアは、とにかく優秀だ。暴走運転をすることもなく、スムーズに駆けていく。そんなルートの先には――

の3メンチャンに構えた。やはり終盤ということもあり、ここは安全度を優先した。その直後――

タンヤオ・三色・ドラ4の12000。この手からリーチをする打ち手もいるかもしれないが、その分、確実に放銃率は増える。この暴走運転こそしないが、コーナーギリギリのラインを突き進むスタイルが野添の強みなのだと思う。
これで一歩抜き出た野添だが、東4局に上田が
・ホンイツ・赤の8000を和了。野添に肉薄していく。

南1局、2局連続の大きな失点を喫した大崎は、高打点のアガリでリカバリーを試みたい局面だ。ドラ2の配牌ということで、
を1鳴きして前へ出る。

さらに
をポンして1シャンテンに。
と
、どちらをポンしても満貫確定だ。

この仕掛けを受けた野添は、234の三色が見えている手格好だ。
を切れば1シャンテンだ。
を切れば、大崎にテンパイが入る。
「大崎さんは点棒がないからアガる分には構わないけれど、私は絶対に打ちたくない局面でした」
そう、この状況の大崎の鳴きが、安いわけがないのである。だが、大崎がアガって局が進むのであれば都合がいい。満貫クラスの手に放銃して降着するリスクだけは避け、大崎に2着目の上田の親番を終わらせてもらおうという狙いだ。守備派の真骨頂が、この局面で発揮された。

こそ鳴けなかった大崎だが、自力で
を引き入れてテンパイを果たした。

野添のもとへ、2枚目の
が。大崎の待ち牌を、野添が吸収していく。

そんな中、上田がこっそりと赤2のチートイツテンパイを果たした。テンパイ打牌の
は、大崎に対してかなり強気な牌に見える。

これを見て、野添は
を切って撤退。2人も危険な匂いを醸している以上、もはやリスクを冒すわけにはいかない。

リーチ・一発・
・赤の8000点。朝倉が着アップするとともに、野添と2着目の点差が広がる結果となった。

南2局、以前ラス目の大崎が不屈のリーチ。赤とドラを1枚ずつ手の内に抱えている。
リーチを受けて一発目の野添。
は現物だが、その後は安牌に窮するかもしれない。それに
を切ると、テンパイ復活も難しそうだ。456の三色も見える1シャンテンで、赤ドラまで持っている。

ということで、スジ牌の
を選んだ。
が4枚見えているため、カンチャン待ちは否定されている。それも
を選んだ要因の一つなのだろう。

が、結果は大崎に対してリーチ・一発・赤・ドラの8000を放銃することに。しかしながら、当の野添はじつに涼しげな表情だった。この時の意図を尋ねると、次の回答をくれた。
「カン
とカン
は大崎さんの現物で、鳴ける可能性が十分にある。それに先ほどより点差が離れていたこともあって、満貫までは打っても構わないくらいの気持ちでいました。
が当たるとはあまり思っていませんでしたが、結果的には全然問題ないですね」
親満が見える手が不発に終わったとしても、次善策はぬかりなく用意している。8000点を失ったとはいえ、ラス目の大崎に振っての局消化なら御の字という思考だ。
そうして迎えたオーラスは、野添が33400点のトップ目、ラス親の朝倉が28500点の2着目、上田が28000点の3着目、ラスの大崎が10100点という状況だ。

着アップのためには跳満以上が必要な大崎。
を積極的に仕掛けていく。ドラが
ということもあり、マンズのホンイツや役牌を絡めれば、跳満どころか倍満にもなるかもしれない。

親番の朝倉は、絶好のペン
引き。早くも2シャンテンとなり、
を切ってリャンメン固定。
を残しているのは、789の三色を見据えてのことだろう。じつに柔らかい一打だ。

さらに次巡には1シャンテン。ネックから牌が埋まっていき、順調この上ない。

朝倉にはスピードで負けているとはいえ、上田も十分に整った手格好だ。2着までの条件クリアは簡単に実りそうだが、トップを狙うには567の三色や赤引きを願いたいところ。

そしてトップ目の野添。これがじつに厳しい手牌だった。1メンツもなく、自力でアガるのはかなり難しそうに見える。この
を――

首尾よく朝倉から
をポンして、跳満の1シャンテンとなった。どこから出アガっても、3着に浮上することができる。

朝倉と上田は500点差しかないため、テンパイ料1つが明暗を分け得る局面だ。彼女たちが切るマンズを中抜き、大崎へのアシストを試みる。実際は
を切れば大崎にテンパイが入るが(
は鳴かないかのうせいもあるが)、万が一の放銃をするわけにもいかない。難局でも野添のゲームメイクが光った。

テンパイ一番乗りは上田だった。役こそないものの、うっかり
をツモっての着アップの可能性は残す。

そして朝倉もテンパイ。リーチ・ピンフ・赤1、1巡目に
を切っている
待ちだ。

上田は前巡に
を引いたところで
を切り、かろうじて放銃を回避していた。
を切り、くっつきの1シャンテンで反撃態勢を整える。

大崎もまだ1シャンテンではあるが、
を押してファイティングポーズを崩さない。

上田は
をトイツ落とししてテンパイを目指す。この局面で、通っていないマンズだけは切れない。3回戦最終局面――

大崎が朝倉の当たり牌である
をつかんだ。
を切れば跳満テンパイを取ることもできるが、そもそも
切りが早いとはいえ
が朝倉に絶対に安全とは言い切れない。そして何より、いくら宣言牌が
とはいえ、
が通りそうに見える河だ。ノータイムで放ってもおかしくないこの
を――

リーチ・ピンフ・赤の5800。これで朝倉が野添を900点リードした。

こうなると、野添と朝倉はスピード重視で前へ出ることとなる。配牌で
がカンツだった朝倉は、1巡目から暗カン。1回でもツモが増えるメリットは、この局面ではあまりに大きい。

これが野添にアンコ! アガリトップの局面ではあるが、他家にドラが少ないというのは、それだけでうれしくもある。

5200点の手を作りたい上田。門前・仕掛けともにそのコースは狙えそうだ。

ここでも高打点を目指したい大崎は、ピンズのホンイツや縦系の手役が本線か。

4巡目、
がアンコになったことでトイトイやチートイツがメインルートとなった。

野添は
から積極的に仕掛けていく。現状はホンイツ狙いだが、イッツーが確定すれば他の色のターツを使えるかもしれない。

この仕掛けが功を奏す。絶好の
引きで1シャンテンとなった。ちなみにこの
が上田のもとに来ていたならば、彼女はテンパイだった。

大崎から出た
をとらえ、8000は8300のアガリ。これにより、野添はこの日2トップ目をもぎ取ることに成功した。

3戦打っての成績が2-1-1。絶妙にマッチした押し引きバランスで、野添はとうとうブロック2位にまで駆け上がった。最終節へ向けて、残る対局はあと1回――。

先ほど屈辱のラスに甘んじた大崎は、東2局1本場の親番で
のポンテンを入れる。赤とドラが1枚ずつの5800。十分すぎるテンパイだ。

そんな局面で野添がチートイツの
待ちでテンパイを入れた。対局後、野添はとにかく大崎の仕掛けを危険視していると語っていた。実際に大崎の仕掛けは十分な破壊力を有している局面が多く、ここでもそれは例外ではない。すでに上田が通している
待ちのヤミテンで、慎重に構えた。

これもツモ切り。生牌の役牌は警戒されやすく、親の仕掛けが入っている局面ならなおさらだ。役牌ゆえに生牌だから山にあるとも言いきれず、それよりもアガりやすそうな
待ちを継続した。そして――

800-1600は900-1700をツモ。危険な大崎の親番を、またしても軽やかにしのいで見せた。

野添がじわじわと加点を続け、迎えた南2局3本場。またしても親は大崎だ。野添は先手を取って局消化を狙いたい。リーのみカンチャンではあるが、
と手出ししている朝倉は
を持っていなそうだ。供託も3本あり、ここをアガりきればトップの座はかなり固くなる。

リーチを受けた一発目、大崎は
をアンコにしての1シャンテン。ドラの
が浮いているが――

そして
を引いて
待ちのリーチを選択! このめくり合いを制したのは――

大崎だった。1000は1300オールで野添をわずかにまくってトップ目に立った。

さらに南3局5本場、朝倉が1300-2600は1800-3100をアガり、トップ戦線へと駆け上がる。そして、最終戦もいよいよオーラスへ――

トップ目は朝倉で30000点、2着目は野添の28900点、3着目は大崎の28400点、ラス目は上田で12700点。この半荘もまた、僅差の攻防がオーラスで繰り広げられることとなった。親の野添は、やや来る位以下。

大崎は1メンツがあるものの、まだまだテンパイまでは遠そうだ。

最も整っているのは上田だったが、彼女は満貫以上をベースとした手組をしたいところ。ここから、どう高打点へと仕上げるか?

7巡目、朝倉がダブ
をポン。チートイツの1シャンテンではあったが、
を鳴ければさらに柔軟に構えられそうだ。

朝倉が切った
をチーして、大崎がネックの一つを解消。
バックや456の三色、タンヤオ移行など、あらゆる可能性が残っている。

テンパイを入れた際には、
・ドラ1のペン
待ちとなった。アガれば一気に2着順アップだ。

その大崎が放った
をポンして、朝倉は1シャンテンに。徐々に場が煮詰まっていく中、野添は――

朝倉のテンパイ牌である
を絞っていた。野添としては、朝倉と大崎がぶつかり合って、横移動で2着というケースも十分に考えられる。自身が後手を踏んでいると見て、冷静な判断を取るギアチェンジを行っていた。

テンパイも重要なこの局面だ。カン
をチーして粘りを見せる。形テンさえも視野に入れつつ、ギリギリのタイトロープの仕掛けを見せた。

打
とした。
は意地でも切らずにテンパイを目指す。野添の職人芸が冴え渡った。野添の守備が決着を長引かせた結果――

局中盤に上田が満貫確定のリーチをかけた。決着の時が近い事を予感させるその宣言は――

リーチ・タンヤオ・ピンフ・赤・裏、上田が大崎から8000点を直撃したことで両者の順位が変動。劇的な結末で、Aブロックは第2節の全対局を終えた。

ここぞという局面での攻撃性と、「氷の女王」の呼び名にふさわしい冷徹なまでの守備力。絶妙なバランスを駆使して、野添は第2節を全連対で締めくくった。そんな最上の結果を見せてなお、対局後の野添は反省しきりだったことも印象深い。彼女が目指し続けるバランスの最適解は、そう遠くないうちに完成するのではないか? そう思わずにはいられない。
そして――。きっと近いうち、麻雀界最大級のミステリーも解決するのだろう。
文:新井等(スリアロ九号機)
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