石井あやと中里春奈、3巡が生んだ悲哀――【麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 予選第3節Cブロック2卓】
「麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019」予選最後の戦い。泣いても笑っても、この日で王女争奪戦から脱落する者が生まれる。
対局者は8位の白田みお、7位の中里春奈、6位の石井あや、3位のディフェンディング王者・麻生ゆりの4名。最終戦の焦点は、下位の選手同士によるサバイバルマッチだろう。
この日は予選最終節ということで、ワイルドカードのボーダーも明確になっている。全ブロックで最もポイントを持っている5位の選手は、▲21.9ポイントの愛内よしえだ。プレーオフ1st進出の最低ラインは、この愛内のポイントとなる。プレーオフ2nd出場権は麻生を上回ることだが、トップラスを決めても130以上のポイント差を覆すのは簡単ではない。現実的には石井と中里の両名は、トップを取ってプレーオフ1stを目指すことになりそうだ。また、麻生としては大平との45.3ポイント差を覆しての準決勝進出、杉村との49.0ポイント差を守りきってのプレーオフ2nd出場など、状況に応じて目標を変えそうな状況だ。そして白田はプレーオフ進出が困難なポイント状況ではあるが、彼女にもブロック最下位を回避することで来年度以降の本戦出場確率を高めるという目標がある。
四者四様のゴールを定め、最後の戦いが始まった――。
最終戦で先手を取ったのは、石井だった。「沈黙のスナイパー」の異名を誇る彼女ではあるが、このプリンセスリーグではリーチを積極的に使う場面も多々あった。なおかつ持ち前の守備力でラス率こそ18%低かったが、それ以上にトップを取ることができなかった。
せめて、この半荘だけはトップを取りたい。そんな思いを抱きながら、石井は沈黙を破る。
東2局、石井がピンフのみの手でリーチをかける。是が非でもトップが欲しい局面だ。1000点で場を流すことのメリットが少なく、打点上昇を加味して積極的に攻めの姿勢を見せていく。
これにすぐさま応戦したのが中里だ。 待ちのリーチで反撃を狙う。決着は――
裏ドラこそ乗らなかったものの、を一発でツモりあげ、軽快な1300-2600の加点に成功した。
オープニングヒットとしては上々な滑り出し。だが、なかなか二の矢が放てない石井。じりじりとしたせめぎ合いが続き、気付けば南2局2本場になっても非常に平たい状況だった。
親の麻生はを早々にポン。浮き牌の横伸びからスピーディーにアガれであるし、、ドラのが重なればホンイツやトイトイの目も残りそうな形だ。
麻生の仕掛けを受けた中里は、をポン。親の加点を阻止すべく、全力でアガリに向かっていく。
そんな中、白田が先制リーチをかける。ラス親の白田としては、トータル8位からの脱出を目指して全力で攻めるのみだ。リーのみとはいえ、道中で麻生がを加カンしていたこともあり気合が入る。
中里のキャッチフレーズは、若手時代に命名されたという「天真爛漫特攻天女」。強気な押しをするような印象を受けるキャッチフレーズだが、現在の彼女は高い守備力に定評のあるプレイヤーへと成長を遂げた。狙うは起死回生のカウンター。リスクは冒さず、天女は冷静に反撃の機会を待った。
一方――
石井にピンフ・赤1のテンパイが入った。高めならイッツーもつき、成就すれば一気に勝負が決まりかねない。ここでもスナイパーは「沈黙」を拒否! 一気呵成に へと照準を合わせ――
見事に高めをツモりあげた! 3200-6200のアガリで、供託・積み棒含めて40000点を突破した。残すは2局のみ。勝敗は決したかもしれない。傍から見ていた僕は、そう思わずにはいられなかった。だが――
そんな予想があっさりと裏切られるのが、麻雀だ。南3局の親番、中里の配牌にはがアンコで赤も1枚。早々にアガリが見込めそうだ。
あとは局消化に努めたい石井は、早々にをポンして2シャンテンに。
そして、あっさりとカン待ちのテンパイにたどり着いた。これをアガりきれば、オーラスは親の白田さえマークすれば高確率でトップを奪取できそうだ。だが――
石井の絶望を誘う、中里の「リーチ」の発声が響いた。なにしろ――
石井の手に、中里の現物は一枚もないのだ。加えて、一発目に持ってきた牌はドラのだ。さすがに、これは簡単には切れない。加えてドラを2枚とも使いきれる牌姿ということで――
ついに、土壇場で天女の反撃が実った。リーチ・一発・・赤の12000点で、一気にフラットな点棒状況に戻ることとなった。
次局、痛恨の一打に見舞われた石井のもとへチャンス手が到来した。わずか5巡で、ピンフ・赤・ドラ2の確定満貫のヤミテンを入れる。不屈のスナイパーが、銃床に手を添えて狙撃態勢に入った。
先ほどのアガリでトップが目前に迫った中里はポンからホンイツ進行でさらなる追撃を狙う。この時ばかりは、天女は昔に立ち返って特攻を試みていく。
ここに割って入ったのが白田だ。赤1のリーチをかけ、最後の親番に望みを繋ぐ。
そしてカンを仕掛けていた中里も、を重ねてテンパイにたどりついた。・ホンイツ、アガれば念願のトップ目だ。
そんな鉄火場で、石井のもとへやってきたのはだった。リーチ者の白田はもちろん、ピンズの染め手が濃厚の中里に対しても危険な牌だ。中里の最終手出しは白田の現物であるだ。テンパイしていない可能性もあるが、危険なことに変わりはない。現状は微差のトップ目。だが――
石井はヤミテンのまま押すことを選択! 愛内のポイントをまくるには、34700点以上のトップ目に立たねばならない。
「これで手を止めて、どうするんだ」
次局に手が入る保証はない以上、ここは明確な勝負所。危険とわかっていても、退くわけにはいかないのだ。
白田は2600は2900のアガリで、2着目へと浮上。あとはここから素点を稼ぎ、ラス脱出やプレーオフ進出が実るまでアガリ続けるだけだ。
オーラスではそんな白田にチャンス到来。赤とドラを含み、ソーズの変化も多彩だ。をポンし、素直に手牌を進行させていく。
石井は条件クリアのために、ピンズのホンイツを目指す。出アガリで跳満という条件を考えると、メンホンチートイなどが本線か。
アガればプレーオフ進出の麻生だが、35400点のトップでこの半荘を終えれば準決勝進出の権利を手にすることもできる。リーチ棒が出ての倍満で準決勝進出という可能性も見越し、よりも字牌を抱える選択を取った。
ここで白田が最高の引き! この手を成就させれば、トータルラス脱出は目前だ。初戦ラススタートだったものの、そこから不屈の2連勝を飾り、最終戦の親番で目標の一つを達成するところまでたどり着いた。
中里は三倍満以上をアガらなければ、愛内越えを果たすことはできない。プレーオフ進出は絶望的ではあるが、最終戦をトップで終えればブロック6位にはなれる。熾烈な争奪戦を勝ち残ってこの舞台に立った中里にとって、本戦出場に繋がる可能性は全力で追いたい。だからこそ、ここは一刻も早くアガってトップを手にしたい局面だ。
この仕掛けを見た石井は、中里の現物である切りを選択。白田がアガれば、もう一度チャンスは巡って来る。それほど、中里に対してとをケアしているということだろう。もしも石井がマンズを勝負していたら、中里が勝ち名乗りを受けていた局面だ。こうして、この局の決着は3巡ほど伸びることとなった。そのたった3巡の間に――
僕らは、四者の牌姿を確認できる「神の目線」で対局を見届けている。こんな一瞬の巡り合わせが堪能できることが、麻雀対局の醍醐味だと思っている。だからこそ、僕らは――
起死回生の12000が決め手となり、白田はこの半荘をトップで終えることに成功した。次局は中里の一人テンパイで流局し――
トータル順位は上記のようになった。次局に望みをつないだ石井は予選で敗退し、中里も一歩及ばずトータル8位となった。
かくして、王女候補のおよそ半数が姿を消した。敗れし者たちの思いも背負い、彼女たちは残るわずかな戦いへと挑んでいく――。
文:新井等(スリアロ九号機)
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