柚花ゆうりに学ぶ「最悪」との付き合い方【麻雀ウォッチ シンデレラリーグ 第2節予選Aブロック2卓】
柚花ゆうりの麻雀を大舞台で見るのは、この「麻雀ウォッチ シンデレラリーグ」で2度目になる。初めて彼女の麻雀をしっかりと見たのは「The All Star League2018」だった。ルールは今大会と同じく赤ありのアガリ連荘。最大の特徴は、最高位戦日本プロ麻雀協会、麻将連合、日本プロ麻雀協会、RMUの麻雀プロ4団体の所属プロによる、3人1組のチーム対抗戦という点だ。現在、麻雀界では「Mリーグ」が大きな潮流を生んでいるが、じつはスリアロでもチーム対抗戦があったんですよ。
※参考:The All Star League2018 出場選手一覧
http://threearrows-ch.com/2018/01/05/allstarleague2018_team/
河野高志、松ヶ瀬隆弥と共に「チームMKHY」の一員として出場した柚花は、予選ラウンドで大爆発! 一流プロがひしめく中、個人成績2位、女流ではトップとなる160.5pを叩き出し、チームの決勝進出に大きく貢献した。だが僕の脳裏には、予選よりも決勝戦での彼女の姿の方が強く印象に残っている。決勝戦の1戦目と2戦目を任された柚花だったが、3着、ラスという厳しい結果に終わってしまう。あまりに展開に恵まれなかった。柚花にとって「最悪」この上ない1日だったと思う。それでも彼女はポーカーフェイスを崩さず、いつか好機が巡って来ると歯を食いしばり続けていた。だが、最後までチャンスは巡ってこなかった――。
そんな姿を目の当たりにしていたから、この日の活躍も当然のことのように感じられた。
2019年一発目のシンデレラリーグは、第2節予選Aブロック2卓からスタート。
2位の涼宮と3位の柚花は準決勝とプレーオフへの進出圏内、山田と鶴海は予選最終節となる第3節の前に、少しでもポイントを叩いておきたいターニングポイント。その幕開けは、あまりに鮮烈だった。
1回戦東1局、親の山田がリーチ・赤1のペン待ちのリーチをかける。
7巡目、柚花の手が止まる。赤1・ドラ1の2シャンテン。345の三色の可能性も残っている。は余剰牌だが、生牌だ。悩んだ末、山田が3巡目にを切っているのを見て、比較的安全度の高い切りを選択。
「このルール(アガリ連荘)だから親リーチに押すことって、いつもより少なくなるんですよね。6万点持っていても4000-8000上がっても、最悪の事態を想定しながら打たないといけないと思っています」
トータルポイントもプラスな上に、相手は親リーチ。無理攻めはしないが、うまくいけば押し返すというバランス感覚だ。
次巡、高打点のキー牌となるが確実に使えるを持ってくる。打とし、この手格好ならばと前へ出る。
を引いて1シャンテン。よりも先にを切っていればテンパイだったが、この可能性はもちろん織り込み済み。避けるべきは「最悪」だ。
終盤に、ようやくテンパイを果たす。「最悪」さえ避けていれば――
「最高」の結果を生むこともある。三色のつくド高めのを一発でツモり、4000-8000のアガリを決めた。結果論ではあるが、から切っていたら一発がつかず、この手は倍満になっていなかった。
さらに東4局1本場。
柚花はリーチ・タンヤオ・ピンフ・赤・ドラの 待ちの3メンチャンリーチ!
涼宮はドラ2の1シャンテンから打。さすがにこの手では簡単には降りられないし、そもそも柚花の河が強すぎて安牌がない。
裏ドラも乗って、柚花は12300点を当面のライバルである涼宮から和了。南入した時点で、57300点のトップ目に立った。さすがの柚花も、この半荘はトップを確信したのではないだろうか? ところが南場では涼宮の連続満貫、鶴海の8100オールなど、高打点のアガリが立て続けに生まれた。柚花の初戦は2着。こんなこともある。決して「最悪」ではない。
続く2回戦でも、柚花は幸先の良いスタートを切る。
4巡目にタンヤオ・チートイツ・ドラ2の待ち。全員がマンズの下を早々に切っており、自分の目から が3枚見え。筋にかかっているだけでなく、場況も最高の待ちだ。実際、山に3枚残り。ヤミテンに構え、確実に8000点を拾いにいく。だが、このが出てこない。いつまで経っても出てこない。
11巡目、柚花はおもむろにツモ切りリーチをかけた。直前に山田が4枚目のを手出しした直後のことだった。
「が見えている枚数もツモ切りリーチの理由としてちょっとあるんですけど、その前に待ちに変えなかったんですよね。もともと待ちには自信がありましたし、待ちにしないくらいなら、リーチだろうと。それでアガれなかったとしても、この選択だったら納得できるかなと」
結果は、ピンフ・高めリャンペーコーのテンパイを取っていた鶴海がをつかみ――
柚花が12000点の出アガリを決めた。待ちでもツモってはいたが、は柚花の読み通り、全て山に眠っていた。
そして迎えた2回戦南4局1本場。
トップの山田とはわずかに2100点差という状況で、親の鶴海からリーチが入る。赤を1枚含んだ 待ちのノベタンだ。柚花はトップが射程圏内の局面で、鶴海に満貫を1回振るだけであれば着落ちはしないで済む。それにシンデレラリーグはアガリ連荘。鶴海のリーチが空振ると、半荘終了となってしまう。テンパイ料での着アップも加味すると、押した場合のメリットはかなり大きそうだ。
そして無筋の、ドラのを勝負して、ピンフ・イーペーコーのテンパイへとこぎつけた。
「を押せた時に、自分が成長していると思えました。昔だったら降りていたんじゃないかと思います」
だが、柚花も鶴海も、なかなかアガリにたどりつけない。
柚花が押している以上、テンパイの可能性は濃厚。なんとかテンパイを取りたい山田は、最終手番でを重ねてチートイツ・ドラ2のテンパイ。流局なら山田がトップ。これは勝負あったか!?
が、その直後に柚花がをツモ。「最良」の800・1400をアガりきった。
前半2戦を2着・トップでまとめて、ブロック内順位は里中花奈に3.6P差と迫る2位となった柚花。
が、ここまで再三にわたって高打点のアガリを連発していたこの人が、またしても柚花の前に立ちはだかる。
「麻雀アブノーマル」こと涼宮麻由だ。断っておくが、彼女の雀風は超がつくほどの王道だ。何がアブノーマルなのかは、ここでは言及しない。ヒントは彼女のツイッター。現場からは以上です。
涼宮は東2局に山田から7700をアガったのを皮切りに――
タンヤオ・赤・ドラ2の4100オール、
リーチ・タンヤオ・ツモ・赤・ドラ・裏の6200オール、
山田からリーチ・白・三暗刻・赤の12900と、怒涛の4連続和了を親番で決めた。南1局2本場にも跳満をツモり、85100点持ちのデカトップを飾ってみせた。
出場選手24名中、最多キャリアの9年というプロ歴。関西をベースに活動している涼宮は、これまで大きなタイトルを獲得した経験がない。そんな経歴が信じられないほど、卓抜した打ち回しだった。ここでは彼女の派手なアガリに着目したが、テンパイに至るまでスリムな構えになる選択を随所で見せていた。この日、解説を務めた多井隆晴、綱川隆晃両名を最も唸らせていたのは、涼宮だった。
3回戦を終えて、165.8Pの涼宮がAブロックのトータルトップに。暴風雨に晒されながら2着に滑り込んだ柚花が、ブロック内2位となっている。ここでも柚花は、「最悪」を避けることに成功していた。
そして最終4回戦、柚花はオーラスで3着目。
ここで柚花は思考の海にもぐる。満貫出アガリなら、涼宮をまくって2着。満貫ツモなら鶴海に親かぶりさせてトップに立てる。ラス目の山田とは8700点差なのでラス落ちのリスクもあるが、2着順アップも現実的な状況だ。リーチをしてツモれば条件クリアではあるが、ドラ表示牌であるカンと心中できるのか? 柚花の選択は――
打。へのくっつきと、ピンズの連続形からの伸びに期待した。仮に、この後にを引いたとしても 待ちのフリテンリーチをかけられる。そんな意図があったという。すると次巡――
ドラのを重ねて張り直した! と待ちのシャンポンリーチをかけると――
見事にをツモって条件クリア! 鶴海が打ったを涼宮がチー。一発を消したのだが、皮肉にも柚花にとって「最良」の結末となった。
4戦を打ち終えて、柚花はトップ2回、2着2回という結果に。第2節だけで115.3pも稼ぐことに成功した。
「(最終戦のオーラスは)昔だったら勝手に気持ち的に追い詰められて、カンでリーチしていたと思います。やっぱり、変化できているんだと思います。変わった影響は、Sリーグの影響がメチャクチャ大きいです」
多井隆晴、松ヶ瀬隆弥、坂本大志など、そうそうたる実力者が名を連ねる私設リーグ「Sリーグ」。柚花は以前からSリーグで研鑽を積んでいた。
「以前は強い人の話を聞いても、自分には取り入れられないし、引き出しにしまってはおくけど、まだ開けることはないだろうなと思っていました。最近は、それをいつ引き出すべきなのか、ちょっとずつわかってきたような感覚があります」
柚花はブロック順位トップで、予選最終節を迎えることとなった。しかも次節では、2位の涼宮と3位の里中が前半卓で潰し合い、柚花はその動向を見守った上で後半卓で対局をする卓組となっている(卓組は、ランダム抽選の上で事前に決定している)。今節、そして次節までの展開を含めて、柚花にとっては「最高」の1日だったことだろう。
一方、ポイントをマイナスした鶴海と山田、とくに山田にとっては「最悪」と呼ぶほかない1日だったと思う。2人とも与えられた手材料でベストを尽くしていたように感じられた。だが、それが報われるとは限らない。それこそ「The All Star League2018」で柚花が味わった、あの1日と同じように。
9か月前のあの舞台で、柚花にチャンスは訪れなかった。それでも彼女は自暴自棄になることなく「最善」を尽くし、「最良」を目指し続けた。自らを見つめ直し、研究を重ね、自分なりの最適解を選び続けた。柚花の今回の好成績は、9か月越しの忍耐の成果なのだと思う。
「最善」を、「最良」を選択し続けたとしても、それが「最高」に直結するとは限らない。それでも彼女たちは、それが「最悪」を遠ざける唯一無二の手段であると知っている。信じている。Aブロック決着まで、残りわずか4半荘。誰が報われるかなんて、魔法使いにだってわからない。
文:新井等(スリアロ九号機)
麻雀ウォッチ シンデレラリーグ 第2節Aブロック2卓
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