未完の大器、瑞原明奈が成熟する時【麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 予選第1節Aブロック1卓】
新鋭女流雀士たちが争奪戦を繰り広げたのがガラスの靴なのであれば、トップ女流雀士たちが誇りをかけて挑む戦いにふさわしいのは、王女のティアラに違いない――。
平成の世が終わりを告げようという4月26日、第2回目となる「麻雀ウォッチ プリンセスリーグ」が開幕した。シンデレラリーグの興奮冷めやらぬなか、今回スポットを浴びたのは最高位戦日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀協会、RMUの麻雀プロ3団体から選ばれた24名のトップ女流雀士たちだ。日本におよそ2000人いる麻雀プロの中で、タイトルを手にできる者は一握りしかいない。そんな過酷な勝負の世界に身を投じ続け、幾多の輝かしい称号を手にした麻雀界の王女たち。あるいは、それに比類する実力者として知られる猛者たちが集う一大祭典だ。誇張なしに予選全ての対局がメインイベント級という顔ぶれなのだが、それぞれの選手については、この観戦記でも追々紹介していこうと思う。
そんな祭りは、これまでの麻雀界の隆盛、そして令和へと続く新時代の明るい未来を想起させるような、じつに華々しい顔ぶれの戦いで幕を開けた。
大崎初音は女流雀王に3度就いた実績が光る、女流雀士の中でトップクラスのプレイヤーだ。
西嶋千春は女流最高位を絶賛連覇中。今回が待望のプリンセスリーグ初参戦だ。
水瀬夏海は第11期夕刊フジ杯麻雀女王など、近年の活躍が目覚ましい打ち手の一人。
そして多くの識者がその実力を高く評価する「未完の大器」こと瑞原明奈。
今回の4人の打ち手のうち、ただ一人だけタイトル獲得歴のない瑞原。しかしながら、その腕前は他の選手と比べてそん色ない。国内最大級のオンライン対戦麻雀「天鳳」における瑞原の最高段位は九段。天鳳では、よほどの実力者であっても八段まで到達するのさえ至難の業と言われる過酷な昇降級システムを採用している。そんな世界で活躍することで、瑞原はID名「みかん太」とともに多くのファンにその名を轟かせていったのであった。
「天鳳を本格的に始めるようになったのは、プロ1年目の冬に産休に入ったタイミングでした。ID名の由来? IDを作る時にみかんをもぐもぐ食べていたから、こんな名前になりました(笑)。あと太いってつけておけば、太いアカウントになるかなって(笑)」
瑞原は二児の母だ。育児に奔走していた時期が長いため、プロとしての活動期間はキャリアほどは長くない。故にノンタイトル。だが合間を縫っては天鳳に勤しみ、麻雀の鍛錬は怠らなかった。今回のプリンセスリーグ初陣も、産休からの復帰戦だった。公式対局は昨年10月、リアル麻雀も12月以来行っていなかったというが、それでもほぼ毎日、モニター越しに真剣に牌と向き合う時間は欠かしていない。同時期に出産を経験した大崎、西嶋、そして急成長中の水瀬を相手取り、「未完の大器」の真価が問われる一戦という構図だった。
ちなみに彼女のキャッチフレーズである「未完の大器」は、昨年のプリンセスリーグ出場の際にはID名をもじって「みかんの大器」としていた。だが「よくよく考えたらみかんの器みたいですね(笑)」という本人からの異議申し立てがあり、現在のものへと変更している。
瑞原はこの日、予選12半荘のうちの4戦に挑む。上記のシステム表にある通り、予選通過の可能性は5位の選手にまで残される。だが、まずは当然上位2位以内に食い込み、ストレートでの準決勝進出を果たしたいところ。是が非でも幸先の良いスタートを切りたい1回戦が始まった――。
東1局、南家を引いた瑞原は赤とドラを含むチャンス手を迎えた。ここから――
打とした。すでに5ブロックあるものの、横に伸びた牌次第で手変わりもありえる形。ここから234の三色などを意識してを残す人もいるかもしれないが、が雀頭の最有力候補であること、234に固執するとが出ていく可能性があることを踏まえ、早々に三色に見切りをつける。それよりも引きに対応できて打点アップが望めるを残した格好だ。
「天鳳はプリンセスリーグと同じ赤ありルールで、そのあたりに慣れていたのは良かったですね。ただ赤牌があるからアガればいいというわけではないですし、普通のドラだけどターツの優秀さが変わってきたりもします。こういうルールは、普段は天鳳のようなネット麻雀じゃないとなかなか打てないですからね」
結果だけを見ると大勢に影響のない打牌選択ではあったが、瑞原がそう述懐するように、彼女の思考が早々に伺える局面だった。
続いて東2局、ドラ。今度は大崎にチャンス手の気配が。赤が2枚にがカンツだ。
無理にカンをするようなこともなく、時間はかかったもののドラのを引いてテンパイを果たした。
そしてをツモ! リーチ・ツモ・赤2・ドラ1、そしてこちらも裏ドラを1枚乗せて跳満を成就させた。女流雀士の祭典にふさわしい、あまりに派手すぎる開幕の跳満連発だ。
大崎と西嶋の2人テンパイを経て、東4局1本場へ。ここで動いたのが、現女流最高位の西嶋だ。役牌のとがトイツで、ペンをチー。4トイツからのチートイツなどを無理に作ろうとはせずい、ネックとなるターツをしっかりと埋めていく。現状トップ目の大崎の親番というのも、この判断に至った理由にはありそうだ。
そこに瑞原が猛然とリーチ! リーチ・ピンフ・赤2の 待ち。をツモれば、またしても跳満だ。
このリーチに対し、西嶋はをポンしてとのシャンポンに構えた。現状の打点は最低2000点。打点は低いものの、さっさとテンパイに構えて局を消化しようという心積りだろう。最悪、危険牌を持ってきたとしてものトイツ落としなどで受けに回れるという自信もあったかもしれない。
この強気な姿勢が実を結ぶ! をツモって700-1300。打点以上に価値のあるアガリをものにした。
現物のを切っていく。最終手出しのは関連牌の可能性が高く。迂闊に切るわけにはいかない。
「この局は点数状況的に相手にしたくない親ということもあり、もうすでにかなり受けていました。けれどがアンコのテンパイなら勝負手、って感じでした。(水瀬)なっちゃんがドラのをツモ切ったこと、赤も1枚見えてることから12000クラスの可能性がちょっと下がったかなと。現物のが降りてる2人から切られていなかったことも、リーチに踏み切った理由の一つです」
しかしながら、ここでは水瀬の当たり牌であるをつかんでしまう。
水瀬の2900点のアガリ。かくして、これで全員がアガリが発生した。
先ほどの失点で3着目へと落ちた瑞原だが、その次局には2巡目に 待ちの3メンチャンリーチ!
これをあっさりと一発でツモりアガってみせ、瞬く間に1400-2700の加点に成功してみせた。
そしてオーラス1本場、供託1本。ドラは。瑞原と5400点差をつけて33200点持ちのトップ目にいる大崎の配牌には、がアンコであった。マンズのホンイツの可能性も十分にあり、ここで満貫ツモ圏内を脱することができようものならば、高確率でトップ目を死守できそうだ。
水瀬は16400点のラス目。ダブがトイツでドラもあり、手格好も十分。21600点の西嶋はもちろん、27800点持ちの瑞原をまくれる可能性は十分にある。跳満をツモれば、大崎に親かぶりをさせて一気にトップへと浮上できる。
瑞原もまた、強烈な配牌だ。すでに2メンツ、1雀頭が完成しており、赤とドラを含んでいる。マンズ、ピンズともに容易に横伸びしそうな連続形となっている。
他家にやや見劣りするものの、西嶋も1メンツが完成している。ネックの処理さえうまくいけば、早期テンパイも実現しそうだ。
そんな中、テンパイ一番乗りを果たしたのは瑞原だった。ピンフ・赤1・ドラ2、ヤミテンの満貫だ。ここに――
瑞原、あざやかな逆転トップ。大崎としては手痛い一打ではあるが、この序盤でのヤミテン満貫はやむなしといったところか。
まだまだ1/12。しかし、大きな1勝を瑞原がたぐり寄せた。初戦の勢いそのままに、2回戦になっても瑞原は攻勢を仕掛けていく。
東1局、西嶋と水瀬の副露合戦の間隙を縫って400-700のツモアガリ。
さらに東2局、水瀬からリーチ・ピンフ・イッツー・イーペーコー・赤1の跳満を和了。序盤に大きなリードを築いたが――
瑞原が親番の東3局に、水瀬がリーチ・ツモ・ドラ3をアガってトップ目の親かぶりに成功する。
そんな中で迎えた東4局に、衝撃の展開が訪れた!
配牌である。配牌で、大崎の手にはがアンコ、、、がトイツでそろっているのである。役満はおろか、ダブル役満、トリプル役満の可能性すらゼロではない。
次巡に持ってきたをツモ切り。少しでも河が派手にならないような工夫も忘れない。
これを必然のポン! 役満・字一色の1シャンテンだ。
当然、誰もこんな恐ろしい手が入っているなどと思っているわけもない。ドラ2を抱えて1シャンテンの西嶋は、めいいっぱいに構えてを切り飛ばしていく。
それは大崎のテンパイ牌だ! を切り、単騎に構える。大崎からしてみれば、ここで単騎を選択するのは必然と言っていい。晒しているのがと。、ともに2枚見えとはいえ、小三元がケアされること、直前に西嶋がを切っていることから、アガりやすさはの方が圧倒的に上だ。
そんな局面で、水瀬がタンピン・赤・ドラのヤミテン満貫のチャンス手が入った。
すでに終盤の煮詰まった局面の中で、瑞原はを抱え、大崎と水瀬の現物であるを切っていく。
ここで水瀬が空切りリーチを敢行! 初戦がラスの水瀬としては、なんとしてもこのチャンス手をものにしたい。なおかつ大崎の手を止め、親の西嶋の進行を遅らせたい狙いもあっただろう。瑞原が撤退模様、西嶋も大崎に安全そうな牌しか切っていないこともあり、自身が止めなければならないという思考に至ったようにも感じた。
このリーチを受けた直後、大崎の手には皮肉にもが巡って来た。これを果たしてアガリ逃しと呼んでいいのか? 少なくとも、僕はそうは思わない。そして、おそらく大崎自身も。
その直後、西嶋からもリーチが入った! ドラをアンコにしてのカン待ち。強烈な手が飛び交う殴り合いの凱歌は――
リーチ・一発・赤1・ドラ3、18000点の移動。王女たちの闘争は、想像を絶する展開を生んだ――。
2回戦オーラスのトップ争いは、大崎、西嶋、そして瑞原の3名に絞られた。瑞原からすると、2着浮上は難しくない点棒状況だが、大崎との6300点差を覆せるほどの手を、ここから作れるものか――。
などと思っていたら、カンをチー! マックス純チャン・三色、3900点の手作りを意識した仕掛けだ。
「この時は、どちらかというとトップより2着を目指していました。トップは大事だけれど、2着と3着の2万点差は大きい。目指すは2着で、出どころ次第でラッキーなトップを取れればいいかなくらいに思っていました」
プリンセスリーグの順位点は10-20にオカが20。シンデレラリーグの観戦記でも再三触れていたが、このルールはトップだけでなく、2着と3着の順位点差が非常に大きいのも特色の一つだ。
「天鳳は着取りゲームの要素が大きく、素点があまり関係ない。その意識は公式対局でも強くて、この着を取るにはどうすればいいかということを考えています。それが逆に素点を稼ぎ損ねちゃうマイナス点、弱点でもあると思っているんですけど、対誰か、自分の置かれている状況とかを重要視しています」
この状況で2着目に食い込むことの重要性を、瑞原は深く理解していたのだった。
テンパイ一番乗りは大崎。こちらもタンヤオ・赤1・ドラ2の満貫だ。
瑞原はネックの1つであるカンを埋め、1シャンテンに。間に合うのか――?
大崎はカン待ちから 待ちへとクラスチェンジ。より盤石の格好となった。このタイミングで――
8000点のアガリで接戦を制し、2戦目トップは大崎となった。
3回戦東1局1本場、西家の瑞原にチャンス手が入った。役々トイトイ、役々ホンイツなどが見える。
オタ風のから積極的にポン! 他家の警戒度が上がるとはいえ、高打点へ繋がるルートを外すわけにはいかない。瑞原の実戦的な思考が垣間見える。
ここで水瀬にドラ1のテンパイが入るが、役なしのヤミテンに構える。ピンズ、ソーズともに連続形であり、を引けば三色にもなる。あまりに魅力的な手変わりが多すぎるため、リーチを選択しなかった。
瑞原は1シャンテンのままをほぼノータイムでツモ切った。カンをして手の内を読まれやすくするリスクを避け、他家が門前のためリーチの打点向上率を下げることを意識。が2枚切られているため、引きのトイトイも狙い目といったところか。
を引き、カン待ちのテンパイ。水瀬がリーチをかけていたならば、このは出ていたのか? そんな思考を巡らせながら観戦してみるのも、また面白い。
このタイミングで三色変化となるを水瀬が引いた。なんたる巡り合わせ……!
役々ホンイツの8300点。3回戦も序盤から瑞原がリードを築いた。
東2局は大崎のターンだ。リーチ・ピンフの 待ち。対面の水瀬はをポンしてのターツを払っている。ドラのが1枚も見えておらず、水瀬は満貫以上が濃厚な仕掛けに見える。それでも大崎はリーチに踏み切った。河をみると、マンズ場況が非常に良い。このリーチに――
5800点のアガリで、大崎が瑞原を追いかける。次局は大崎と水瀬の2人テンパイで流局し、迎えた瑞原の親番(プリンセスリーグはアガリ連荘ルール)。
「基本的にダブリーはかけますね。よっぽどかけないメリットが多くない限りは」
ドラのに赤もあり、満貫確定だ。ダブルリーチをかける価値が、あまりに大きい。そして――
見事にツモ! 裏ドラも1枚乗せ、会心の6200オールをアガってみせた。
瑞原の攻勢は続く。次局にはダブをポン! しかも赤1・ドラ2が手の内にあり、またしても満貫以上が濃厚だ。
そんな仕掛けを受けながら、水瀬がリーチ! 赤とドラを1枚ずつ使った 待ちだ。
大崎もチートイツのテンパイ。水瀬の当たり牌を2枚使い、待ちに構えている。勝ったのは――
水瀬だった! リーチ・一発・ツモ・ドラ3の3300-6300。ここまで苦しい展開が続いていた彼女が、ようやく反撃の狼煙を上げた。
あっさりとをツモ。電光石火の4000オールで、これまでの不調が嘘のような加点に成功してみせた。
水瀬の快進撃を阻んだのは、瑞原だった。わずか5巡でメンピン・赤・ドラのリーチをかける。
これを現状ライバルの水瀬からアガり、8300点の加点をした。
対局終了後に瑞原が「一番満足のいくアガリだった」と振り返ったのが、南2局2本場のこのシーン。ドラが。ここから瑞原は――
「この親を流せばトップになる確率がかなり高そう。よってとにかく親を流したいと考えていました。とにかく高い放銃は絶対ダメだから、安全にアガれる形を作りたい。打点はさほど必要ないのでドラ受けより役の可能性を残しました。やもありましたが、生牌の役牌より親の現物の役牌を残したかった。かつ、うまく重ねて鳴けた時の周りのプレッシャーもダブ南だと大きいですからね。3人が競っている状況なので、親も放銃はしたくないはずと考えていました。あとはもちろん受け駒としての役割も意識していました。のところでを切ると、(西嶋)千春さんの以外は誰に対しての安牌候補も全くなくなるので、手牌の価値とも点数状況ともそぐわない。でも南より安全度として優先順位が高いよりは(共通役牌の1枚切れと北家が切ってる1枚切れ)、重ねた時の価値としてを残しています。もちろんを切っているのが親というのもありますが」
場況に完全にマッチした思考とともに、カンターツを払っていく。
先にも触れたように、瑞原はとにかく状況判断に優れた打ち手だ。場況にマッチした選択を随所で見せ、徹底して理で打つ。これまで彼女が培ってきた総力を結集したかのような、じつに見事なアガリだった。
瑞原のトップ目がほぼ確実なものとなった南3局、ここでは西嶋がドラ3の手を――
一発ツモ! 3000-6000をアガり、2着目もほぼ不動のものとなった。
3回戦が終了して、2トップを飾った瑞原が大きく抜け出す格好に。それぞれが第2節へと向けたテーマを定め、この日の最終戦が始まった――。
全員が横並びという状況での東4局、瑞原がドラ1のリーチをかける。が宣言牌のペン待ち。が宣言牌の場合、からを切っているとは考えにくく、待ちは通りやすいというセオリーがある。ただし今回はドラがのため、やや出にくいか。
このリーチを受けた親の水瀬は、現在1シャンテン。少し考えた後――
だった。が宣言牌のセオリーは、もう1つある。それはとが非常に危険ということだ。やといったターツを持っていた場合、をギリギリまで引っ張るケースが多い。そのため宣言牌がになりやすいというわけだ。そんなセオリーは、もちろん水瀬は百も承知だ。それでも彼女は危険牌のを切り、待ちに構えてみせたのだ。
「めっちゃくちゃピンズが場に高くて、が2枚飛んでいる待ちのリーチを瑞原さんがを切ってまでするだろうかと思ったんです。それは考えにくい。と持っていたなら、切りのヤミテンにしそうだと考えました。それならばドラそばのペンの方が危険度が高いという判断です」
厳しい展開に晒され続けながらも、水瀬はいたって冷静に思考を続けていた。その結果――
瑞原の当たり牌であるを食い取り、あまりに鮮やかな1000オールをアガりきって見せた。このファインプレーが功を奏し、水瀬は僅差ながらトップ目でオーラスを迎えた。
オーラスの瑞原は3着目。西嶋とは1500点差で、水瀬とは3800点差。2回戦に引き続き、今回もトップが容易に狙えるような牌姿ではない。
「ここも、まずは2着を意識していましたね。2ハンあれば上出来で、あとはテンパネする手ができるかどうかという意識でした」
そんな中、がアンコに。50符1ハンの1600点が現実的な手格好となった。ここから瑞原は――
打とした。現状、で致命傷となるのは引きの1枚だけだ。単純なリャンメンでは出アガリ条件を満たせず、ツモアガリにかけるしかない。それならば4枚あるドラのを生かせるを残す。また、形の強さからピンズの連続形も外すわけにはいかない。条件を満たして、なおかつアガらなければならないのだ。その結果――
絶好の引きでリーチ! の3メンチャン。だが は1600点でどこからでも着順アップとなるが、は1300点。たとえば大崎からが放たれた場合は裏ドラ頼みとなるが、アンコが2つあるこの牌姿は、ひじょうに裏ドラが乗りにくい。
「 はもちろんどこからでもアガるのですが、が大崎さんから出た時にどうするかを考えていました。大崎さんはオーラスでラス目ではありましたが、トータルポイントはプラスのまま最終戦を迎えていました。それならば裏期待を期待しつつ大崎さんからアガり、もし裏が乗っていなかったら少しでも素点を削れたということで、3着でもいいかなと思っていました。それよりも見逃して大崎さんに追いかけられて、直撃してラスですという方が嫌な展開なので。もし私がマイナスしているポイント状況だったらトップがどうしても欲しいと思うので、ツモとなっちゃんからの直撃だけを考えていたと思います」
そんな思考を抱きながらかけたリーチは――
をツモって裏ドラも1枚乗せるという結果に。1300-2600のアガリで、この日3つ目のトップを飾ってみせた。
プリンセスリーグの初戦、そして復帰戦。瑞原にとってあらゆるテーマをはらんだ戦いは、彼女にとって最上級の結末となった。
「未完の大器」を自称する瑞原だが、その器はいま着実に完成へと近づきつつある――。
文:新井等(スリアロ九号機)
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