LINEで送る

プリンセスロゴ

新鋭女流雀士たちが争奪戦を繰り広げたのがガラスの靴なのであれば、トップ女流雀士たちが誇りをかけて挑む戦いにふさわしいのは、王女のティアラに違いない――。

平成の世が終わりを告げようという4月26日、第2回目となる「麻雀ウォッチ プリンセスリーグ」が開幕した。シンデレラリーグの興奮冷めやらぬなか、今回スポットを浴びたのは最高位戦日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀協会、RMUの麻雀プロ3団体から選ばれた24名のトップ女流雀士たちだ。日本におよそ2000人いる麻雀プロの中で、タイトルを手にできる者は一握りしかいない。そんな過酷な勝負の世界に身を投じ続け、幾多の輝かしい称号を手にした麻雀界の王女たち。あるいは、それに比類する実力者として知られる猛者たちが集う一大祭典だ。誇張なしに予選全ての対局がメインイベント級という顔ぶれなのだが、それぞれの選手については、この観戦記でも追々紹介していこうと思う。

そんな祭りは、これまでの麻雀界の隆盛、そして令和へと続く新時代の明るい未来を想起させるような、じつに華々しい顔ぶれの戦いで幕を開けた。

対局者
大崎初音は女流雀王に3度就いた実績が光る、女流雀士の中でトップクラスのプレイヤーだ。
西嶋千春は女流最高位を絶賛連覇中。今回が待望のプリンセスリーグ初参戦だ。
水瀬夏海は第11期夕刊フジ杯麻雀女王など、近年の活躍が目覚ましい打ち手の一人。
そして多くの識者がその実力を高く評価する「未完の大器」こと瑞原明奈。

瑞原
今回の4人の打ち手のうち、ただ一人だけタイトル獲得歴のない瑞原。しかしながら、その腕前は他の選手と比べてそん色ない。国内最大級のオンライン対戦麻雀「天鳳」における瑞原の最高段位は九段。天鳳では、よほどの実力者であっても八段まで到達するのさえ至難の業と言われる過酷な昇降級システムを採用している。そんな世界で活躍することで、瑞原はID名「みかん太」とともに多くのファンにその名を轟かせていったのであった。

「天鳳を本格的に始めるようになったのは、プロ1年目の冬に産休に入ったタイミングでした。ID名の由来? IDを作る時にみかんをもぐもぐ食べていたから、こんな名前になりました(笑)。あと太いってつけておけば、太いアカウントになるかなって(笑)」

瑞原は二児の母だ。育児に奔走していた時期が長いため、プロとしての活動期間はキャリアほどは長くない。故にノンタイトル。だが合間を縫っては天鳳に勤しみ、麻雀の鍛錬は怠らなかった。今回のプリンセスリーグ初陣も、産休からの復帰戦だった。公式対局は昨年10月、リアル麻雀も12月以来行っていなかったというが、それでもほぼ毎日、モニター越しに真剣に牌と向き合う時間は欠かしていない。同時期に出産を経験した大崎、西嶋、そして急成長中の水瀬を相手取り、「未完の大器」の真価が問われる一戦という構図だった。

ちなみに彼女のキャッチフレーズである「未完の大器」は、昨年のプリンセスリーグ出場の際にはID名をもじって「みかんの大器」としていた。だが「よくよく考えたらみかんの器みたいですね(笑)」という本人からの異議申し立てがあり、現在のものへと変更している。

システム
瑞原はこの日、予選12半荘のうちの4戦に挑む。上記のシステム表にある通り、予選通過の可能性は5位の選手にまで残される。だが、まずは当然上位2位以内に食い込み、ストレートでの準決勝進出を果たしたいところ。是が非でも幸先の良いスタートを切りたい1回戦が始まった――。

sono1.mov_002304068
東1局、南家を引いた瑞原は赤とドラを含むチャンス手を迎えた。ここから――

sono1.mov_002306937

m3とした。すでに5ブロックあるものの、横に伸びた牌次第で手変わりもありえる形。ここから234の三色などを意識してm3を残す人もいるかもしれないが、s2が雀頭の最有力候補であること、234に固執するとs5rが出ていく可能性があることを踏まえ、早々に三色に見切りをつける。それよりもp5r引きに対応できて打点アップが望めるp6を残した格好だ。

sono1.mov_002347645
結果的にm3p6も不要な満貫確定リーチとなり――

sono1.mov_002440838
ツモって裏も乗せて3000-6000!

「天鳳はプリンセスリーグと同じ赤ありルールで、そのあたりに慣れていたのは良かったですね。ただ赤牌があるからアガればいいというわけではないですし、普通のドラだけどターツの優秀さが変わってきたりもします。こういうルールは、普段は天鳳のようなネット麻雀じゃないとなかなか打てないですからね」

結果だけを見ると大勢に影響のない打牌選択ではあったが、瑞原がそう述懐するように、彼女の思考が早々に伺える局面だった。

sono1.mov_002481545

続いて東2局、ドラm6。今度は大崎にチャンス手の気配が。赤が2枚にm9がカンツだ。

sono1.mov_002793857
無理にカンをするようなこともなく、時間はかかったもののドラのm6を引いてテンパイを果たした。

sono1.mov_002845642
そしてp7をツモ! リーチ・ツモ・赤2・ドラ1、そしてこちらも裏ドラを1枚乗せて跳満を成就させた。女流雀士の祭典にふさわしい、あまりに派手すぎる開幕の跳満連発だ。

sono1.mov_003345875
大崎と西嶋の2人テンパイを経て、東4局1本場へ。ここで動いたのが、現女流最高位の西嶋だ。役牌のz6z7がトイツで、ペンp3をチー。4トイツからのチートイツなどを無理に作ろうとはせずい、ネックとなるターツをしっかりと埋めていく。現状トップ目の大崎の親番というのも、この判断に至った理由にはありそうだ。

sono1.mov_003360890
さらにz7もポンして、1シャンテンへ。

sono1.mov_003378007
そこに瑞原が猛然とリーチ! リーチ・ピンフ・赤2のp6 p9待ち。p6をツモれば、またしても跳満だ。

sono1.mov_003405034
このリーチに対し、西嶋はm4をポンしてs1z6のシャンポンに構えた。現状の打点は最低2000点。打点は低いものの、さっさとテンパイに構えて局を消化しようという心積りだろう。最悪、危険牌を持ってきたとしてもz6のトイツ落としなどで受けに回れるという自信もあったかもしれない。

sono1.mov_003424287
この強気な姿勢が実を結ぶ! s1をツモって700-1300。打点以上に価値のあるアガリをものにした。

sono1.mov_003514577

続いて南1局、ドラm1。ここまでアガリのなかった水瀬がz1――

sono1.mov_003536466
そしてz5を軽快にポン!

sono1.mov_003632095
中盤にp2 p5待ちのテンパイを果たした。

sono1.mov_003658187
この仕掛けを受けた瑞原は――

sono1.mov_003660423
現物のm4を切っていく。最終手出しのs7は関連牌の可能性が高く。迂闊に切るわけにはいかない。

sono1.mov_003679075
ターツを払っている間にp9を引き、1シャンテンに復活。

sono1.mov_003697994
さらにz7をアンコにしてテンパイ。

sono1.mov_003701998
思考の時間を挟み――

sono1.mov_003715011
今度はリーチに踏み切った!

「この局は点数状況的に相手にしたくない親ということもあり、もうすでにかなり受けていました。けれどz7がアンコのテンパイなら勝負手、って感じでした。(水瀬)なっちゃんがドラのm1をツモ切ったこと、赤も1枚見えてることから12000クラスの可能性がちょっと下がったかなと。現物のs7が降りてる2人から切られていなかったことも、リーチに踏み切った理由の一つです」

sono1.mov_003734163
しかしながら、ここでは水瀬の当たり牌であるp5をつかんでしまう。

sono1.mov_003738701
水瀬の2900点のアガリ。かくして、これで全員がアガリが発生した。

sono1.mov_003793990
先ほどの失点で3着目へと落ちた瑞原だが、その次局には2巡目にm3 m6 m9待ちの3メンチャンリーチ!

sono1.mov_003817980

これをあっさりと一発でツモりアガってみせ、瞬く間に1400-2700の加点に成功してみせた。

sono1.mov_004556318
そしてオーラス1本場、供託1本。ドラはp6。瑞原と5400点差をつけて33200点持ちのトップ目にいる大崎の配牌には、z5がアンコであった。マンズのホンイツの可能性も十分にあり、ここで満貫ツモ圏内を脱することができようものならば、高確率でトップ目を死守できそうだ。

sono1.mov_004563358
水瀬は16400点のラス目。ダブz2がトイツでドラもあり、手格好も十分。21600点の西嶋はもちろん、27800点持ちの瑞原をまくれる可能性は十分にある。跳満をツモれば、大崎に親かぶりをさせて一気にトップへと浮上できる。

sono1.mov_004572601
瑞原もまた、強烈な配牌だ。すでに2メンツ、1雀頭が完成しており、赤とドラを含んでいる。マンズ、ピンズともに容易に横伸びしそうな連続形となっている。

sono1.mov_004578073
他家にやや見劣りするものの、西嶋も1メンツが完成している。ネックの処理さえうまくいけば、早期テンパイも実現しそうだ。

sono1.mov_004652914
そんな中、テンパイ一番乗りを果たしたのは瑞原だった。ピンフ・赤1・ドラ2、ヤミテンの満貫だ。ここに――

sono1.mov_004666695
大崎が飛び込んだ。

sono1.mov_004671099
瑞原、あざやかな逆転トップ。大崎としては手痛い一打ではあるが、この序盤でのヤミテン満貫はやむなしといったところか。

1回戦終了時
まだまだ1/12。しかし、大きな1勝を瑞原がたぐり寄せた。初戦の勢いそのままに、2回戦になっても瑞原は攻勢を仕掛けていく。

t1
東1局、西嶋と水瀬の副露合戦の間隙を縫って400-700のツモアガリ。

t2
さらに東2局、水瀬からリーチ・ピンフ・イッツー・イーペーコー・赤1の跳満を和了。序盤に大きなリードを築いたが――

t3
瑞原が親番の東3局に、水瀬がリーチ・ツモ・ドラ3をアガってトップ目の親かぶりに成功する。

そんな中で迎えた東4局に、衝撃の展開が訪れた!

sono1.mov_006571631
おわかりいただけただろうか?

配牌である。配牌で、大崎の手にはz4がアンコ、z1z5z6がトイツでそろっているのである。役満はおろか、ダブル役満、トリプル役満の可能性すらゼロではない。

sono1.mov_006573967
p2を切り――

sono1.mov_006592218
次巡に持ってきたp9をツモ切り。少しでも河が派手にならないような工夫も忘れない。

sono1.mov_006646606

5巡目にはz1がアンコに!

sono1.mov_006684544
そして手格好が整ってきた瑞原からz5が打ち出された。

sono1.mov_006688548

これを必然のポン! 役満・字一色の1シャンテンだ。

sono1.mov_006711137
当然、誰もこんな恐ろしい手が入っているなどと思っているわけもない。ドラ2を抱えて1シャンテンの西嶋は、めいいっぱいに構えてz2を切り飛ばしていく。

sono1.mov_006727220
さらにz6もツモ切り。z6

sono1.mov_006732492
それは大崎のテンパイ牌だ! z7を切り、z2単騎に構える。大崎からしてみれば、ここでz2単騎を選択するのは必然と言っていい。晒しているのがz5z6z2z7ともに2枚見えとはいえ、小三元がケアされること、直前に西嶋がz2を切っていることから、アガりやすさはz2の方が圧倒的に上だ。

sono1.mov_006769095
そんな局面で、水瀬がタンピン・赤・ドラのヤミテン満貫のチャンス手が入った。

sono1.mov_006796322
すでに終盤の煮詰まった局面の中で、瑞原はz3を抱え、大崎と水瀬の現物であるm7を切っていく。

sono1.mov_006835562

 

ここで水瀬が空切りリーチを敢行! 初戦がラスの水瀬としては、なんとしてもこのチャンス手をものにしたい。なおかつ大崎の手を止め、親の西嶋の進行を遅らせたい狙いもあっただろう。瑞原が撤退模様、西嶋も大崎に安全そうな牌しか切っていないこともあり、自身が止めなければならないという思考に至ったようにも感じた。

sono1.mov_006840400
このリーチを受けた直後、大崎の手には皮肉にもz7が巡って来た。これを果たしてアガリ逃しと呼んでいいのか? 少なくとも、僕はそうは思わない。そして、おそらく大崎自身も。

sono1.mov_006849142
その直後、西嶋からもリーチが入った! ドラをアンコにしてのカンs5待ち。強烈な手が飛び交う殴り合いの凱歌は――

sono1.mov_006854814
西嶋に上がった。なんと水瀬が一発でs5rをキャッチ!

sono1.mov_006859152
リーチ・一発・赤1・ドラ3、18000点の移動。王女たちの闘争は、想像を絶する展開を生んだ――。

sono2.mov_000585618

2回戦オーラスのトップ争いは、大崎、西嶋、そして瑞原の3名に絞られた。瑞原からすると、2着浮上は難しくない点棒状況だが、大崎との6300点差を覆せるほどの手を、ここから作れるものか――。

sono2.mov_000643009
などと思っていたら、カンp8をチー! マックス純チャン・三色、3900点の手作りを意識した仕掛けだ。

「この時は、どちらかというとトップより2着を目指していました。トップは大事だけれど、2着と3着の2万点差は大きい。目指すは2着で、出どころ次第でラッキーなトップを取れればいいかなくらいに思っていました」

プリンセスリーグの順位点は10-20にオカが20。シンデレラリーグの観戦記でも再三触れていたが、このルールはトップだけでなく、2着と3着の順位点差が非常に大きいのも特色の一つだ。

「天鳳は着取りゲームの要素が大きく、素点があまり関係ない。その意識は公式対局でも強くて、この着を取るにはどうすればいいかということを考えています。それが逆に素点を稼ぎ損ねちゃうマイナス点、弱点でもあると思っているんですけど、対誰か、自分の置かれている状況とかを重要視しています」

この状況で2着目に食い込むことの重要性を、瑞原は深く理解していたのだった。

sono2.mov_000652785
アガればトップの大崎も、果敢に仕掛けて前進する。

sono2.mov_000658090
西嶋もz1をポン! 赤2・ドラ1を内蔵した大物手だ。

sono2.mov_000686552
テンパイ一番乗りは大崎。こちらもタンヤオ・赤1・ドラ2の満貫だ。

sono2.mov_000691090
瑞原はネックの1つであるカンs7を埋め、1シャンテンに。間に合うのか――?

sono2.mov_000703069
大崎はカンs6待ちからs3 s6待ちへとクラスチェンジ。より盤石の格好となった。このタイミングで――

sono2.mov_000718217

素点回復を狙った水瀬からs3がこぼれた――。

sono2.mov_000723189
8000点のアガリで接戦を制し、2戦目トップは大崎となった。

2回戦終了時
これで大崎がトータルポイントでトップ目に立った。

sono3.mov_000550583
3回戦東1局1本場、西家の瑞原にチャンス手が入った。役々トイトイ、役々ホンイツなどが見える。

sono3.mov_000563563
オタ風のz2から積極的にポン! 他家の警戒度が上がるとはいえ、高打点へ繋がるルートを外すわけにはいかない。瑞原の実戦的な思考が垣間見える。

sono3.mov_000593960
この鳴きでz3をアンコにし、1シャンテンに。

sono3.mov_000623689
ここで水瀬にドラ1のテンパイが入るが、役なしのヤミテンに構える。ピンズ、ソーズともに連続形であり、m2を引けば三色にもなる。あまりに魅力的な手変わりが多すぎるため、リーチを選択しなかった。

sono3.mov_000637403
瑞原は1シャンテンのままz3をほぼノータイムでツモ切った。カンをして手の内を読まれやすくするリスクを避け、他家が門前のためリーチの打点向上率を下げることを意識。m9が2枚切られているため、s1引きのトイトイも狙い目といったところか。

sono3.mov_000674774
m7を引き、カンm8待ちのテンパイ。水瀬がリーチをかけていたならば、このs1は出ていたのか? そんな思考を巡らせながら観戦してみるのも、また面白い。

sono3.mov_000742208
さらにm6を引き、m5 m8待ちへと変化。そして――

sono3.mov_000763028
このタイミングで三色変化となるm2を水瀬が引いた。なんたる巡り合わせ……!

sono3.mov_000765264
役々ホンイツの8300点。3回戦も序盤から瑞原がリードを築いた。

sono3.mov_001096361
東2局は大崎のターンだ。リーチ・ピンフのm1 m4待ち。対面の水瀬はz6をポンしてs5rs7のターツを払っている。ドラのz5が1枚も見えておらず、水瀬は満貫以上が濃厚な仕掛けに見える。それでも大崎はリーチに踏み切った。河をみると、マンズ場況が非常に良い。このリーチに――

sono3.mov_001105804
またしても水瀬が捕まってしまう。

sono3.mov_001111443
5800点のアガリで、大崎が瑞原を追いかける。次局は大崎と水瀬の2人テンパイで流局し、迎えた瑞原の親番(プリンセスリーグはアガリ連荘ルール)。

sono3.mov_001536535
ここで瑞原のダブルリーチが入った!

「基本的にダブリーはかけますね。よっぽどかけないメリットが多くない限りは」

ドラのm2に赤もあり、満貫確定だ。ダブルリーチをかける価値が、あまりに大きい。そして――

sono3.mov_001680045
見事にツモ! 裏ドラも1枚乗せ、会心の6200オールをアガってみせた。

sono3.mov_001852116

瑞原の攻勢は続く。次局にはダブz1をポン! しかも赤1・ドラ2が手の内にあり、またしても満貫以上が濃厚だ。

sono3.mov_001857088
そんな仕掛けを受けながら、水瀬がリーチ! 赤とドラを1枚ずつ使ったp1 p4待ちだ。

sono3.mov_001879811
大崎もチートイツのテンパイ。水瀬の当たり牌を2枚使い、p8待ちに構えている。勝ったのは――

sono3.mov_001890922
水瀬だった! リーチ・一発・ツモ・ドラ3の3300-6300。ここまで苦しい展開が続いていた彼女が、ようやく反撃の狼煙を上げた。

sono3.mov_001950481
迎えた水瀬の親番、ダブz1のポンから発進し――

sono3.mov_001986551
z6をポン!

sono3.mov_002004769

p2も鳴いたかと思えば――

sono3.mov_002028393
あっさりとs4をツモ。電光石火の4000オールで、これまでの不調が嘘のような加点に成功してみせた。

sono3.mov_002154418
水瀬の快進撃を阻んだのは、瑞原だった。わずか5巡でメンピン・赤・ドラのリーチをかける。

sono3.mov_002230728
これを現状ライバルの水瀬からアガり、8300点の加点をした。

sono3.mov_003024588
対局終了後に瑞原が「一番満足のいくアガリだった」と振り返ったのが、南2局2本場のこのシーン。ドラがp6。ここから瑞原は――

sono3.mov_003026690
ドラ受けを否定するp7を切った。

sono3.mov_003094591
その後、ツモ切りを続けた後に見事にダブz2を重ねている。

「この親を流せばトップになる確率がかなり高そう。よってとにかく親を流したいと考えていました。とにかく高い放銃は絶対ダメだから、安全にアガれる形を作りたい。打点はさほど必要ないのでドラ受けより役の可能性を残しました。z7z5もありましたが、生牌の役牌より親の現物の役牌を残したかった。かつ、うまく重ねて鳴けた時の周りのプレッシャーもダブ南だと大きいですからね。3人が競っている状況なので、親も放銃はしたくないはずと考えていました。あとはもちろん受け駒としての役割も意識していました。p7のところでz2を切ると、(西嶋)千春さんのs8以外は誰に対しての安牌候補も全くなくなるので、手牌の価値とも点数状況ともそぐわない。でもz2南より安全度として優先順位が高いz4よりは(共通役牌の1枚切れz2と北家が切ってる1枚切れz4)、重ねた時の価値としてz2を残しています。もちろんz2を切っているのが親というのもありますが」sono3.mov_003096860
場況に完全にマッチした思考とともに、カンm3ターツを払っていく。

sono3.mov_003109973
目論見通りにダブz2を鳴くことにも成功し――
sono3.mov_003330627

ダブz2・赤1、3900は4500を水瀬からアガった。

先にも触れたように、瑞原はとにかく状況判断に優れた打ち手だ。場況にマッチした選択を随所で見せ、徹底して理で打つ。これまで彼女が培ってきた総力を結集したかのような、じつに見事なアガリだった。

sono3.mov_003591287
瑞原のトップ目がほぼ確実なものとなった南3局、ここでは西嶋がドラ3の手を――

sono3.mov_003620817

一発ツモ! 3000-6000をアガり、2着目もほぼ不動のものとなった。

3回戦終了時
3回戦が終了して、2トップを飾った瑞原が大きく抜け出す格好に。それぞれが第2節へと向けたテーマを定め、この日の最終戦が始まった――。

sono4.mov_001731262
全員が横並びという状況での東4局、瑞原がドラ1のリーチをかける。p5rが宣言牌のペンp7待ち。p5rが宣言牌の場合、p5p5rp6からp5rを切っているとは考えにくく、p4p7待ちは通りやすいというセオリーがある。ただし今回はドラがp8のため、やや出にくいか。

sono4.mov_001737969
このリーチを受けた親の水瀬は、現在1シャンテン。少し考えた後――

sono4.mov_001743808
p5rをポン! ここから打ち出されたのは――

sono4.mov_001745210

p4だった。p5rが宣言牌のセオリーは、もう1つある。それはp1p4p6p9が非常に危険ということだ。p2p3p7p8といったターツを持っていた場合、p5rをギリギリまで引っ張るケースが多い。そのため宣言牌がp5rになりやすいというわけだ。そんなセオリーは、もちろん水瀬は百も承知だ。それでも彼女は危険牌のp4を切り、p7待ちに構えてみせたのだ。

「めっちゃくちゃピンズが場に高くて、p1が2枚飛んでいるp1p4待ちのリーチを瑞原さんがp5rを切ってまでするだろうかと思ったんです。それは考えにくい。p2p3p5rと持っていたなら、p2切りのヤミテンにしそうだと考えました。それならばドラそばのペンp7の方が危険度が高いという判断です」

厳しい展開に晒され続けながらも、水瀬はいたって冷静に思考を続けていた。その結果――

sono4.mov_001794159
瑞原の当たり牌であるp7を食い取り、あまりに鮮やかな1000オールをアガりきって見せた。このファインプレーが功を奏し、水瀬は僅差ながらトップ目でオーラスを迎えた。

sono4.mov_003239536
オーラスの瑞原は3着目。西嶋とは1500点差で、水瀬とは3800点差。2回戦に引き続き、今回もトップが容易に狙えるような牌姿ではない。

「ここも、まずは2着を意識していましたね。2ハンあれば上出来で、あとはテンパネする手ができるかどうかという意識でした」

sono4.mov_003322185
そんな中、z3がアンコに。50符1ハンの1600点が現実的な手格好となった。ここから瑞原は――

sono4.mov_003330293
s4とした。現状、s4で致命傷となるのはs5r引きの1枚だけだ。単純なリャンメンでは出アガリ条件を満たせず、ツモアガリにかけるしかない。それならば4枚あるドラのm9を生かせるm8を残す。また、形の強さからピンズの連続形も外すわけにはいかない。条件を満たして、なおかつアガらなければならないのだ。その結果――

sono4.mov_003361091
絶好のp9引きでリーチ! p4 p7 p8の3メンチャン。だがp4 p7は1600点でどこからでも着順アップとなるが、p8は1300点。たとえば大崎からp8が放たれた場合は裏ドラ頼みとなるが、アンコが2つあるこの牌姿は、ひじょうに裏ドラが乗りにくい。

p4 p7はもちろんどこからでもアガるのですが、p8が大崎さんから出た時にどうするかを考えていました。大崎さんはオーラスでラス目ではありましたが、トータルポイントはプラスのまま最終戦を迎えていました。それならば裏期待を期待しつつ大崎さんからアガり、もし裏が乗っていなかったら少しでも素点を削れたということで、3着でもいいかなと思っていました。それよりも見逃して大崎さんに追いかけられて、直撃してラスですという方が嫌な展開なので。もし私がマイナスしているポイント状況だったらトップがどうしても欲しいと思うので、ツモとなっちゃんからの直撃だけを考えていたと思います」

そんな思考を抱きながらかけたリーチは――

sono4.mov_003413510
p4をツモって裏ドラも1枚乗せるという結果に。1300-2600のアガリで、この日3つ目のトップを飾ってみせた。

対局結果
プリンセスリーグの初戦、そして復帰戦。瑞原にとってあらゆるテーマをはらんだ戦いは、彼女にとって最上級の結末となった。

「未完の大器」を自称する瑞原だが、その器はいま着実に完成へと近づきつつある――。

文:新井等(スリアロ九号機)

麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 予選第1節Aブロック1卓

AbemaTV⇒https://abema.tv/channels/mahjong/slots/BcWssqAzmk5mZ1
FRESH LIVE⇒https://freshlive.tv/threearrows-ch/267335

プリンセスリーグ2019特設サイトはコチラ!
http://threearrows-ch.com/2019/04/26/princess2019_main/

チャンネル入会希望の方はコチラへどうぞ!