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誰だって、みんな一度はヒーローに憧れたことがあるだろう。特撮だったり、アニメだったり、スポーツだったり、ジャンルは人それぞれかもしれない。けれど英雄が活躍する姿に心踊らされる黄金体験は、ほとんどの人が通ってきた道のはずだ。

いつからだろう? 自分は英雄たり得ないと思うようになったのは。いまだに中2心を忘れられない僕ではあるけれど、年を重ねるにつれて、やはりどこかで現実と折り合いをつけていく。英雄は、憧れのままで――。それが大人になることなのだと、自分を納得させるように言い聞かせるのである。

三添

日本プロ麻雀協会所属、「CHANGE the WORLD」三添りん。麻雀で世界を変えると、彼女は言う。

「もともとは、私が好きな『BiS』っていうアイドルグループの曲名で、『絶対にやってやるんだ!』っていう反骨心があるような歌詞なんです。悩みに悩んで決めたキャッチフレーズだけど、これを言うとみんな笑う。だけど、今はそれでいいと思っています」

時に愚者と思われようと、目指さなければ英雄にはなれない。

「麻雀って、いくら勉強しても結果が直結するとは限らないじゃないですか。結果が出なくてヘタクソと人に言われて、ここ1年くらい気持ちが折れかけていました。プリンセスリーグに出ている他の人たちは強いし、きちんと結果も出している。正直、自分は格下だって思っています。優勝して、初めて私のことを認識してもらえる。優勝しないと、世界を変えるスタートに立てないと思うんですよ」

かくして、三添の世界を変えるための戦いが始まった――。

システム

対局者
プリンセスリーグ予選第1節は、Cブロックに突入。愛内は昨年度3位の実績を誇り、石井と白田はそれぞれ自団体の最高峰タイトル獲得経験者だ。

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1回戦東2局、ドラはp5。石井に超チャンス手のテンパイが入った。タンピン・赤2・ドラ1で、高めのm7なら三色までつく。石井の異名は「沈黙のスナイパー」。ここは当然――

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リーチとした。スナイパー、沈黙せず! 跳満を確定させ、安目ツモでも倍満を狙える選択をここでは取った。その結果――

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m7をツモ! 裏ドラも1枚乗せ、10本折れの倍満を成就させた。三添は、早々に8000点の親かぶりをしてしまう。

 

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続いて東3局。まず動いたのは南家の愛内だ。z7をポンして――

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m7切りのドラ色ホンイツコースへ。

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この仕掛けを受けた白田は、くっつきの1シャンテンからp4切りとした。愛内に対する危険牌を先に処理しようという意識と、s2周りを引いてテンパイした際の勝機が見込めそうな場況を考慮に入れたのだろう。

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ここでリーチをかけたのが三添! ペンm3を引き入れ、p3 p6待ちのテンパイ。どちらでも満貫確定だ。

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白田も追いつきm1 m4 m7待ちのリーチをかけたが――

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直後に三添がp3をツモ。先ほどの親かぶりの分を、あっという間に取り返した。

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ところが東4局、三添は赤1の先制リーチをかけたのだが――

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このタイミングで愛内がタンヤオ・イーペーコー・赤2のヤミテンを入れる。待ち牌のp6は、三添の中スジだが――

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他家から出る前に、三添がp6をつかんでしまう。

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愛内に12000を放銃し、またしても三添がラス目に転落する。

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続いて東4局1本場、石井は2巡目にカンm8固定となる打m5を選択。p5rにくっついた場合の変化と、先にs4 s7が埋まった場合の待ちの強さを考慮に入れたカンチャン固定だ。

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その目論見通り、カンm8待ちでリーチをかけた。

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親の愛内もリーチをかけて局面がさらに煮詰まる。m8は両者のスジで、さらにアガリが見込みやすくなりそうだ。そこに――

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m8がぽっかり浮いている三添が飛び込んだ。ドラ3の1シャンテンで、さすがにm8くらいはと勝負しそうだ。

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石井の技ありの一打で、三添はさらに2600は2900の失点を許してしまう。

「格上」の難敵たちを相手取り、三添にとって厳しい展開が続く。転機が訪れたのは、南3局2本場だった。

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石井がタンヤオ・ピンフ・イーペーコー・赤1の満貫確定のテンパイを果たす。スナイパー石井、今度は「沈黙」のヤミテンを選択した。

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そんな中、三添がチートイツのm5r待ちでリーチをかける。

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これを見た石井は、ツモ切り追いかけリーチを発動! この日の石井は、そのイメージより多くのリーチをかけていたような気がする。トップの価値が大きいプリンセスリーグにおいて、是が非でも勝ちをもぎ取ろうという姿勢が感じられた。

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2軒リーチという局面で、現状ラス目の白田は三色のみのテンパイを果たした。打点こそ安いものの、アガりきれれば着アップが十分に見込める。

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そんな中、三添の当たり牌であるm5が白田の元へ。白田は、果たしてどうするのか?

局面をおさらいしてみよう。石井は、三添がm2を切った直後にツモ切りリーチで追いかけた。点棒状況や巡目的にも、石井は役ありテンパイだがヤミテンにしていたという可能性は十分に考えられ、その前提にのっとるとm2 m5のスジは石井に通りそうに見える。石井にm5 m8で当たる可能性はあるが、終盤ながらまだまだ通っていない牌も多い。また、三添の河も非常に強く、チートイツにも到底見えない。放銃した際のリスクは大きいが、通しきった時のハイリターンも視野に入れ――

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白田はm5を河に置いた――。

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三添が12600のアガリをものにして、一気にトップまで射程圏内となる位置についた。

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そしてオーラス、現在2着目の親の愛内が、z6をポンしてドラのs6p8のシャンポン待ちに構える。

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満貫ツモでトップに立つ三添は、こちらの1シャンテン。イーペーコーや三暗刻などの手役が絡めば、条件がクリアできそうだ。

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アガればトップの石井はカンp4待ちのリーチをかけたが――

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愛内がドラをツモって4000オール成就! 両名を一気に引き離した。

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非常に縦長の展開となったことで、オーラス1本場は三添と石井の2着争いが主軸となった。先制リーチは三添。うれしすぎるs5r引きで、ピンフ・赤2のリーチをかけた。ちなみにプリンセスリーグで同点の場合、順位点は分けとなる。

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このリーチを受け、石井はリーチ・タンヤオ・赤のp5 p8待ちで応戦する。p5をツモり、一発や裏ドラが絡んで跳満になれば、トップへと浮上できる。リスクを承知で勝負に出たが――

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石井がドラのm1をつかんだ――

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裏ドラはp6で12300点のアガリ。三添が2着目に食い込むことに成功した。

1回戦終了時
「ジェットコースターみたいな展開でしたね(笑)。最初は全然アガれなくて、心の中では『今日もこんな感じか』と思うこともあって。だけどアガれるようになってから、気持ちはどんどん入っていきました」

徐々に集中力が高まり、三添は卓へと入りこんでいく。

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2回戦で主導権を握ったのは、現状トップ目の愛内だった。東3局1本場、リーチ・赤1のカンm8待ち。m7m9が自身の目から3枚ずつ見えており、場況が良い。

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これに石井が飛び込んでしまう。

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裏も1枚乗り、5500のアガリでトップ目に。他家としては、愛内の連勝は歓迎できない。

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その進軍に待ったをかけたのが三添、タンヤオ・赤・ドラのカンm4をツモって2000-4000。トップ目に浮上する。

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南1局には、ドラがトイツのこのリーチ! 追撃を見舞っていく。

 

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高めのs2を白田から一発で打ち取り、12000点。これが決定打となり、三添が2戦目のトップをもぎ取った。

2回戦終了時
2回戦が終了して、三添と愛内がほぼ並びのポイントとなった。一方、悲しいほどに当たり牌をつかみ続けた白田は、2連続ラス。しかも、ここまで一度もアガれていないという展開だ。

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3回戦開局早々、そんな白田にドラ2・赤2のビッグチャンスがやって来る。

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仕掛けても打点十分ということで、白田はm3m3m4からm3ポンとした。整ったターツからのm3ポンは、威圧感十分だ。

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これに敏感に反応したのが石井だった。2枚目のz7をポンしてs6切り。s1 s4のテンパイを取った。フラットな状況であれば、s6にくっついてのドラ受けターツを見越し、z7のトイツ落としをするという選択肢も視野に入れていたのかもしれない。が、この局面で悠長なことはしていられない。

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そして、あっさりと300-500のツモ。白田のチャンス手を握りつぶした。

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東2局には、親の愛内に好機が巡ってきた。ダブz1をポンして、ドラ2・赤1を抱えている。12000から18000まで見える手だが――

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ここでも石井が動く。z7をポンしてテンパイを取り――

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p5をツモ。2局続けての300-500だが、打点以上の価値があるアガリだ。

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東3局、親番の白田に再びチャンス手が。ドラのz4が配牌からアンコだ。

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一方、石井もくっつきの1シャンテンという配牌だ。ぶつかり合いの予感が、早々に漂う。

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4巡目、石井はメンピン赤のs4 s7待ちで先制。

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白田も追いつきリーチをかけたが――

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s7をつかんでしまう。

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石井の3900のアガリ。三たび、大物手を封殺してみせた。

3局連続で点棒を積み重ね、徐々に石井がリードを広げていく。

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東4局、今度は三添のターンだ。z1のポンテンを取った三添の手にはドラのz6が2枚。p5rも内蔵しており、満貫が確定だ。

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愛内が絶好のm3 m6 m9待ちのリーチをかけたが、宣言牌のs5rは――

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三添の当たり牌だ。8000点をアガって石井をまくる。

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南入して、親番の三添がわずか2巡でテンパイ。z5・赤2のカンs7待ち。打点も十分だ。ヤミテンとし――

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雀頭をs8にしたところでリーチ。満貫確定だ。

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s4をツモって4000オール。さらなる加点に成功した。

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そんな三添を、現状2着目の石井が猛然と追い上げていく。南2局には、この1シャンテン。受け入れ枚数で考えるとs7切りだが――

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石井はp9を切ってピンズ1メンツ構想とした。狙いはイーペーコーor三暗刻。打点を見据えた鋭い一打だ。

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続いてp8m5を入れ替え。可能性は低いが、567の三色へと変化した場合は欠かせない牌だ。そして――

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s6をアンコにしてリーチ! 打点を追った手組にしたのだから、宣言牌は当然m5だ。

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このリーチを受け、白田はチートイツを石井の現物であり、自身のスジ牌でもあるp9待ちで受けた。河に置いたのはz2だが――

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そのz2を石井はあっさりと持ってきた。白田を弄ぶような展開が続く。

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さらに愛内がポンテンを果たす。

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そしてs5を切ってノーチャンスのm9待ちに受けた。が、このm9は石井にアンコの牌だ。結果――

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石井がs7をツモ! 会心の2000-4000をツモった。

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三添と石井の点差は、わずか3200点。そんな中、石井が先制のテンパイを果たした。p2単騎の役なしテンパイ。より良い単騎候補の牌を持ってきた場合に備えてヤミテンとしたが――

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愛内がp3を切ったタイミングでリーチとした! 白田の副露メンツにp3が1枚使われており、すでに4枚見え。このp2待ちで十分に勝機が見込めるとして、リーチを選択した。

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このリーチを受けた三添は、早々にs4を切って撤退模様だ。テンパイまではまだ遠く、石井がリーチ棒を出したために流局でも順位は変動しない。プリンセスリーグはアガリ連荘のため、石井がアガらない限りはここが最終局となる。ラス目の愛内が前に出てくる可能性も十分にあるため、2枚切れのz6も手元に残しておいた。m9も石井の安全牌だが、下家の愛内の本線はマンズのホンイツに見える河だ。愛内が前に出て石井に放銃するというパターンは、三添にとって望ましいものではない。よって、ターツを壊すことになるが打s4としている。

三添は、プロ入りする前から勤務先の麻雀店で赤ありのアガリ連荘ルールに慣れ親しんでいた。その対局数は、おそらく数万半荘は固いだろう。親番でのリーチ判断や、親のリーチに対する押し引きなど、三添のこのルールへの習熟度は出場選手の中でも随一だ。仮に実績で劣っていていも、三添には実戦で培った武器がある。その結果――

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石井の一人テンパイで流局となった。三添はリスクを冒さず、うれしい2トップ目を手にすることに成功した。

3回戦終了時
ポイントで競っていた愛内とトップラスを決めたことで、三添が一人突き抜ける格好に。

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最終4回戦は、東1局に愛内が白田から満貫をアガったところからスタート。

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東2局、三添は赤2のテンパイを果たす。だが、待ち牌のm6はすでに2枚切れ。北家のため、役もない。

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三添は、テンパイを取ってヤミテンに構えた。アガれればうれしいが、無理にアガリに向かう必要もないという局面。打点が見込めるとはいえ、何でも前へ出るというわけではない。3回戦までにポイントを稼いでいたことで、三添にはヤミテンを選択できるだけの余裕があった。

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一方、石井はドラがアンコに。6ブロックあり、どれを外すかという局面だが――

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石井はp2切りを選んだ。三色や純チャンも見えるものの、いずれも確定しているわけではない。ドラ3あるため打点は十分で、z1のポンテンが効くメリットは大きい。p2p3s2s3の選択は、p1が1枚見えていることを考慮して、端牌がより多く残っているs2s3を残したといったところか。

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そしてm4引いてリーチを敢行!

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このリーチに白田が応戦した。リーチ・ピンフ・赤1のp5 p8待ち。ここまで、一度としてめくり合いに勝てていなかった白田だが――

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4戦目にして初勝利を収めた。

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5800点を石井からアガって着アップした白田。最終戦でようやく初アガリをものにするという、厳しい展開続きだった。

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その後、3局連続で流局となり、南1局の4本場に突入。溜まりに溜まった供託は3本。愛内がややリードという中で、白田はz6をポン。ドラのp8もトイツで、中打点以上が見込める。

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p4をツモってきたところでz2切り。このz2をトイツで抱えていたのは愛内だったが――

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ポンせず。供託が3本あるとはいえ、まだ1メンツも完成していない。故に鳴かずといったところか。

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ならば2枚目のz2はどうか?

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愛内、これも鳴かず!(画像はイメージです) すでにお気づきかと思うが、彼女の狙いは――

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チートイツ。s2を重ねて1シャンテンに。積み上げられた供託を前に焦ることなく、最短距離を進んでいく。

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一方、なかなか手が進まない白田だが、p7受けを否定するp6切り。ドラを2枚使い切ることを絶対条件とし、ドラそばのp6より比較的安全度の高いm8を手元に残した。

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局は終盤に差し掛かり、石井は1シャンテンに。

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p3切りとして、678の三色の可能性を残す。m9が2枚切られているため、片アガリの仕掛けもしやすいか。これだと鳴いても満貫を狙いやすいコースだ。

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そして、残る三添も1シャンテン。m2がアンコになったところで――

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この日一番の長考に入る。悩んだ末に――

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m2の空切りとした。

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これに白田が飛びついた。チーして1シャンテンに。

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その1巡後、愛内の元へp2がやってきた。実際には1シャンテンだが、2副露している白田がテンパイしていてもおかしくない。チートイツ狙いの愛内にちって、すでに切っているp2は邪魔この上ないが――

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白田に合わせてp7を切った。

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このp7を石井がチー! タンヤオ・三色・赤・ドラのペンm6待ちだ。

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次巡には、m5がアンコになってm6 m7待ちに変化。打点は下がるものの、この方がはるかにアガりやすそうだ。そして――

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狙い通りのm7ツモ!1000-2000は1400-2400に供託3本をプラス、占めて8200点を加点して愛内とほぼ並びとなった。

 

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愛内と石井、2人を追いかける展開となった南2局。すでに親番のない三添は、残り少ないチャンスを確実にものにしたい局面だ。ドラはp3。メンツこそないものの、なんとしてもアガりたい手が三添のもとへやって来た。

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トップ目の愛内は、わずか2巡で索子に染まりきっている。

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そして親の白田がテンパイを果たす。カンs7待ちのリーチをかけられるが――

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s8切りでテンパイ外しをした。ピンズが4連形で、かなりの変化が見込める手格好だ。p8をすでに切っているが、p7引きからのフリテン3メンチャンも、十分に勝機を見出せる待ちだろう。そういえば、このs8は――

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愛内が欲しい牌だった。が、彼女は鳴かず。z1z4のシャンポン待ちはかなりアガリやすそうだが、微差のトップ目で2000点をアガっても決め手とはならないとの判断だろう。

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そんな愛内とシンクロするかのように、石井もまたm2のチーテンを拒否した。そして――

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うれしい門前テンパイを果たす。z3・赤・ドラ、5200点のテンパイで必殺の沈黙を発動させた。

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その直後、白田が待望のリャンメンテンパイを果たす。s5 s8はフリテンだが、s7が3枚見え。愛内だけはソーズの上目をどの程度持っているか判別がつきにくいが、石井と三添は持っていなそうに見える。

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リーチを受けた直後、石井が無スジのm4をつかむ。実際には通るものの、親リーチの一発目に2スジにかかるこの牌を切れるのか? 石井は――

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z3切りを選択。z3を3枚切っても張り直せる可能性は十分にあるだろう。ヤミテンにしたメリットが、さっそく訪れた。

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その次巡、愛内がひっそりとメンホンのヤミテンを入れた。先も述べたように、z1z4のシャンポンは、かなりアガリが拾えそうだ。いずれも生牌ではあるものの、とくにz4は白田に対してもオタ風で、出アガリの期待が十分に見込めるだろう。

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その噂のz4が、三添のもとへ。ドラ2・赤1の1シャンテンで、親番はなし。親リーチを受けているものの、なんとかアガりたい局面だ。「z4くらいは!」と切る人がいてもおかしくないが――

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三添は忍耐のp5切りとした。

「普段だったら、手拍子で切って放銃していたかもしれないです。卓に入りこめていたんですかね?」

その直後のことだった。

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白田がz4をつかんだのは――。

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愛内が5200点をアガり、この局は決着。この日、終始手が入り続けていた三添だが、ここぞという局面でのメリハリが効いていた印象だった。

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次局にはリーチ・ツモ・チートイツの1600-3200をアガって2着目になった三添。オーラスは愛内が白田から1000点をアガって決着。かくして三添は、全連対で第1節を終えることとなった。

4回戦終了時
愚者から、英雄へ――。「絶対にやってやるんだ」という反骨心を胸に抱き、三添は世界の変革を目指し続ける。

文:新井等(スリアロ九号機)

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