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2回戦終了時

2回戦終了時全体
「麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019」の予選Bブロックは、異様なポイント状況だった。最終第3節の前半2戦を終えて、トータルプラスの選手は、わずかに2人。この異常事態を演出したのは――

逢川
間違いなく逢川恵夢によるところが大きかった。わずか10戦で400ポイント近くを叩き出し、早々に準決勝進出を手中に収めている。

対局者
システム
暫定3位の水口と、暫定8位の冨本とのポイント差は、わずか48.8ポイント。水口、蔵、大澤の3名は、後半卓に出場する4名にプレッシャーをかけるため、少しでもポイントを叩いて優位に立つ必要があった。必然、残り2戦は乱打戦となりそうだ。そんな予感は、序盤から的中することとなった。

t1
3回戦東1局、先手を取ったのは蔵だった。メンピンドラ2をツモりあげ、サクッと2000-4000の加点に成功する。

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次局も先制リーチは蔵だ。m6m9のノベタンにも取ることができたが、打点が不十分とあってドラのz6単騎でリーチとした。攻撃的な蔵らしい選択だったが――

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水口がm3 m6待ちのピンフで追いかけリーチを放つ。このめくり合いは――

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蔵が一発でm6を持ってきて決着。裏も1枚乗って8000点のアガリとなった。蔵が待ちにすることもできたm6をつかんでしまうあたり、なんとも皮肉な結末だった。

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東3局は大澤のターンだった。p1をポンしてチンイツへと向かう。

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首尾よくp9ポン、そして――

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3枚目のp7をチーしてテンパイまでたどり着いた。決して優秀な待ちとはいえないが、残り順目を考えればテンパイを取った方が良さそうだ。ところが――

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最後のp7で僥倖の4000オール成就! 一気にトップ目へと浮上した。

麻雀とは、立て続けに選択を迫られるゲームだ。難しい選択には、必ず一長一短がある。どの「長」に重きを置くかは個人差があるし、その結果として「短」を引いてしまうこともある。蔵は「短」を、大澤は「長」を引いた。そうして明暗は分かれていく。けれど、「長」を引き続けたら勝てるゲームというわけでもない。それは麻雀の醍醐味であり、残酷さでもあるのだと思う。

長いものは、より長いものに屈するしかない。

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南1局、親番の水口には狂おしいほどの好機が訪れた。s6s7s8でチーして、タンヤオ・赤2・ドラの1シャンテンに。

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あっさりとs4をポンして満貫のテンパイが入ると――

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見事にツモりアガってトップ目に躍り出た。

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まだまだ南1局だ。大澤も蔵も親番を控えており、チャンスは残されている。蔵はツモり三暗刻のリーチで応戦したが――

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ここでも水口に超ド級のテンパイが入っていた。満貫以上が確定している3メンチャンで、これが決まれば3回戦、そして最終戦まで含めた結果も決まりかねない勝負手だ。

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さらに逢川もs1 s4待ちのリーチで参戦。大澤、そしてリーチをかけていた蔵でさえ、水口がアガるくらいであれば、逢川にアガって欲しいと願っていたかもしれない。

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だが、その願いは叶わない。鮮烈な美しいアガリも、視点を一つ変えるだけで残酷な様相を呈してくる。水口の6100オールのアガリは、勝負の大勢を決すると言っていいものだった。

3回戦終了時

3回戦終了時全体

 ふと、過去に立ち会ったことのある対局の一場面を思い出した。残酷な対局の趨勢を見守る立場にいると、対局者に少なからず敬意や思い入れを抱いてしまうこともある。そんな思いをこじらせて「いっそのこと、みんなに勝って欲しいくらい複雑な心境ですよ……」なんていう四方山話をとある選手とした時のことだった。

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付き合いの長いその選手からは「バカだなぁ、誰かが勝って、誰かが負けるから麻雀は面白いんだろ?」なんていう真っ当な答えが返ってきたけれど、至極その通りだと思う。

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誰かが勝って、負ける。そんな当たり前のことで、麻雀プロの人生は変わる。

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それは「残酷」かもしれない。けれど、それでも戦い続ける打ち手の姿に僕らは魅せられる。何度も、何度でも――。

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そして敗者がいるからこそ――

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勝者もまた、より一層の輝きを放つのだ。

4回戦終了時

4回戦終了時全体
後半卓の結果を待たずして、大澤と蔵の勝ち上がりの芽は潰えた。

こうして、また王女候補が姿を消した。けれど、僕らは知っている。彼女たちの勇姿が、最後に残る王女をより輝かせることを。美しく残酷な世界に魅せられた僕らは、これからもそうやって戦いの行く末を見守り続けていくのだろう。

文:新井等(スリアロ九号機)

麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 予選第3節Bブロック1卓

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