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「ガラスの靴は、左右そろえなきゃ履けないでしょ!」

そんな口上と共にこの日最後の対局者として紹介されたのは、日本プロ麻雀協会所属、「雀怒ダルク」(ジャンヌダルク)中山百合子。

昨年、初開催された「麻雀ウォッチ シンデレラリーグ」で圧倒的な攻め麻雀を最後まで貫き、一躍その名を轟かせた。優勝トロフィー代わりにガラスの靴を受け取った彼女は、連覇を飾って一足そろえることを目指す。そんな意味のこもった、じつに洒落た口上だ。


2017優勝

ちなみに考えたのは僕だ。塚田美紀プロの「黒いデジタルの寵愛を受ける戦乙女」と攻めた口上を思いついたのも僕だ。いや、調子に乗ってすいません……。

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第1節Bブロック1卓。シンデレラリーグ初出場の塚田は昨年の分まで暴れたいところだし、夏目智依、樋口栄佳には前年のリベンジ戦という、それぞれのテーマがある。そんな中でも、やはり注目が集まったのはディフェンディング王者の中山だった。初代シンデレラが初陣で、どんな戦いを見せるのか? 昨年のシンデレラリーグでは自らを「サメ」に例えるほど獰猛な攻めっぷりを発揮していたが、今年はそれ以上の押しが見られるかもしれない。そんな期待を抱きながら対局を見守ったのは、僕だけではないと思う。

1回戦東4局1本場、いきなり見せ場が訪れた。

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先制攻撃は中山。リーチ・ピンフ・赤1、s4s7待ちのリーチをかける。

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親の樋口は1シャンテンだったが、これを受けて現物のp9切りを選択。

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さらに同巡、夏目がリーチ・チートイツ・ドラ2、z6待ちで追いかけリーチ!

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さらにさらに、西・三色・ドラ2のヤミテンを張っていた塚田もツモ切りリーチで参戦! 1回戦から白熱の展開に。

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軍配は中山に上がった。塚田からs7で打ち取り、裏も乗せて満貫、8000は8300+供託4本を手に入れた。このリードを死守して中山がトップに。一方、塚田はラススタートとなった。

「王者・中山が連覇へ向けて、快調な滑り出しを見せた」

この時点で、僕は今回の観戦記をこのようなテーマで進めようとプランを立てていた。書き出しからオチまで、ある程度の構想を練っていたのだけれど、そんな前準備は無意味に過ぎない。そう思い知らせてくれたのは、初戦で手痛いラスを喫した塚田だった。

2回戦の南3局、全員にトップが見える点棒状況で、塚田にチャンス手が入る。

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役はないが、ドラ3のテンパイだ。z3は場に1枚切れ。m7がドラでさえなければ、ツモ切ってイッツーとイーペーコーも見える好形変化が期待できそうだが……。

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塚田の選択は、リーチ! ドラを生かしきったイッツーなど、さらなる高打点を見るのであればz3トイツ落としという選択もあるかもしれない。だが、この後にm2m5を引いたところで、アガリを期待するのは難しそうだ。m1m4m3m6引きでのリャンメン変化を待つ間、他家が手を進めてアガリを逃すのもいただけない。ならばz3に狙いを定めよう。なにより、うっかりm7をツモろうものならば跳満からだ。そんな思考だろう。

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このz3をつかんだのは中山。この8000放銃が響き、中山はラス。1回戦とは間逆の並びで、非常に平たいポイント状況となった。

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続く3回戦も、この勢いそのままに塚田のターンが続いた。東2局、親番で4000オールを連発。序盤で大量リードを獲得した。

おや? 遅まきながら、3回戦にして気付くことがあった。

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東2局1本場、中山のこの仕掛けである。2枚目のカンp6をチー。z7バック赤2ならば、1枚目からチーという人もいるかもしれないし、門前に強いこだわりを持つ人であれば、2枚目も鳴かないかもしれない。1年前の中山は、強い門前志向の持ち主であった。きっと当時の中山であれば、このp6を鳴かなかったと思う。

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目論見通りにz7をポンできた頃には、m6を引き入れ盤石の3メンチャンとなっていた。

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結果的にテンパイ打牌のz1を塚田に鳴かれ、高め満貫のテンパイが入り、4000は4100オールをアガられはした。だがそこに至るまでの中山の大きな変化に、僕は興味をそそられずにはいられなかった。

さらに4回戦東4局では、こんな局面も。

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ここからp3をチー。234の三色と、z7バックを見据えた仕掛けだ。これも昨年までの中山にはなかった選択肢だと思う。門前で最高打点を目指し、仕掛けた場合は満貫ベースどころか跳満ベースなのではないか? というくらいの高打点志向の持ち主が、たった1年でこうも変われるものなのか……。

驚嘆すべきは、単にスタイルチェンジを図ったことではない。プロ入りから結果を残し続けているのに、それでもなお進化する道を選択した覚悟だ。

中山は昨年までの攻め麻雀で、プロ歴4年としては十分すぎるほどの結果を残してきた。シンデレラリーグ制覇に加え、オータムチャンピオンシップの第11回と第13回で決勝進出も果たしている。赤ありアガリ連荘のシンデレラリーグと、日本プロ麻雀協会主催の一発・裏ドラ・カンドラのないオータム。対局に位置するルールの大会それぞれで好成績を収めているのだ。

中山は、現状に満足しなかったのだ。シンデレラも12時を回れば魔法が解け、一人の淑女に戻る。中山もまた王者としてではなく、挑戦者として戦う姿勢を僕たちに見せてくれたのだ。

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この日、終わってみれば初戦ラススタートだった塚田が3連勝を飾り、+136.2ポイントと大きく抜け出す格好となった。それでも中山が2着目に食い込めたのは、スタイルチェンジの賜物だったのかもしれない。

「1年前は攻撃9:防御1くらいのバランスでした。だから型にハマればめちゃくちゃ勝つけれど、大負けする時も多かった。今は攻撃6:防御4くらいかな。それでも、他の選手よりは攻めっけが強い方だと思うんですけど。まだ進化の途中だから、フルスイングはできないんですけどね(笑)。でも、整ってきている実感はあります」

そう語る中山の表情から、悲壮な感情は一切見受けられない。

「この1年、毎日ずっと勉強をしています。私が働いている麻雀店はシンデレラリーグと同じルールだし、(同じ赤ありルールの)Mリーグも毎回チェックしています。だから、このルールでは負けたくないんです」

童話「シンデレラ」のラスト、王子に見染められるシンデレラは魔法にかかっていない、ありのままの姿だった。王者としての肩書きにとらわれていない中山は、間違いなく昨年より強い。だから僕は、やはり最後にこの一文を添えずにはいられない。

王者・中山が連覇へ向けて、快調な滑り出しを見せた――。

文:新井等(スリアロ九号機)

麻雀ウォッチ シンデレラリーグ 第1節 Bブロック1卓

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